首都圏マンション販売、24年ぶり低水準
16年上期19%減
不動産経済研究所(東京・新宿)は14日、2016年上半期(1~6月)の首都圏マンションの市場動向調査を発表した。発売戸数は前年同期比19.8%減の1万4454戸。販売価格が高止まりし、購入意欲が低下していることから、バブル崩壊後の1992年以来24年ぶりの低水準となった。消費増税の再延期で駆け込み需要も消えており、同研究所は通年の予想を下方修正した。

東京建物が東京・上野で売り出したマンション。今春、「9月末までに購入契約を結べば、引き渡しが消費増税後でも8%の税率が適用される」というセールストークも使える6月からの販売を決めた。だが、実際にはその言葉は使えなくなった。増税そのものが遠のき、急いで購入する必要がなくなったためだ。
増税延期は5月に相次いで報じられ、安倍晋三首相が6月1日に正式に表明した。マンション会社の一部には駆け込み需要への期待があったが、当面見込めなくなった。
マンション価格は人件費など建設コストの上昇を受けて高止まりし、購入を考える人が二の足を踏んでいる。不動産経済研究所によると、首都圏では上半期に平均5686万円となり、前年同期から8.2%上昇した。
東京カンテイ(東京・品川)がまとめた15年の新築販売価格から平均年収の何倍かを計算すると、東京や神奈川では11倍を超えた。08年の9倍程度から上昇し、一般のサラリーマンが購入しにくくなるとされる7倍を大きく上回っている。
在庫も増えている。6月末時点で6130戸と前年同月比1194戸増えた。不動産経済研究所の松田忠司主任研究員は「これ以上増えると適正水準を上回る」とみる。
上半期の発売戸数はリーマン・ショック後の09年を下回り、1万959戸だった92年以来の水準となった。増税延期を受け、同研究所は16年通年の首都圏の発売戸数を3万7千戸と、当初予測の4万3千戸から大幅に下方修正した。松田主任研究員は「増税が予定通りあれば4万戸には達していただろう」とみる。
購入者として目立っていた海外投資家の動向にも変化がある。台湾の不動産仲介大手で日本でも事業展開する信義房屋不動産は「円高が進んだ影響は大きく、以前のように物件を見ずに契約を結ぶ投資家はみられなくなった」と指摘する。
現時点でマンション各社が販売戸数の上積みを狙い、価格引き下げに走る様子はない。むしろ1戸当たりの利益が大きい高額物件に重点を置く。
東急不動産は東京都心部で1億円以上の物件に力を入れ始めた。「ブランズ ザ・ハウス一番町」(千代田区)は平均価格3億円だが、昨年8月の発売からわずか半年でほぼ完売した。野村不動産ホールディングスも港区六本木で10億円を超える物件を発売した。
不動産コンサルティングを手掛けるオラガ総研(東京・港)の牧野知弘社長は「今後は利便性の良いターミナル駅前の物件などのほか、景気変動に関係ない超富裕層を意識した物件の開発が進むだろう」と話す。