フリースクールがある自治体、5割超「連携なし」
不登校の子供らが学ぶフリースクールがあっても、連携していない自治体が5割超に上ることが文部科学省の調査で分かった。子供の学校復帰につながるかどうかや、個人情報の取り扱いについて課題を感じ、連携に及び腰の教育委員会が多い。有識者による同省の専門家会議は「社会的自立の支援という目的は同じ」と改善を促している。
こうした実態を受け、専門家会議はこのほどまとめた報告書案で、モデル事業を実施し連携を促すよう国に提言。▽教委が体験活動や教育相談をフリースクールに委託▽共同での支援施設の運営や学習会の開催――などを例示した。互いのノウハウを生かせば、幅広い支援が期待できるという。文科省は来年度予算の概算要求に必要経費を盛り込む方針。
調査は今年2月、都道府県とフリースクールがある市区町村の計288教委を対象に実施。連携について聞いたところ(複数回答)、53%に当たる153教委が「特に行っていない」と答えた。
連携している教委でも「職員がフリースクールを視察」(92教委)、「学校にフリースクールの情報を提供、学校によるフリースクール訪問の促進」(67教委)といった取り組み内容にとどまった。
連携に向けた課題(複数回答)では、「学校復帰のための取り組みと相いれるか明確でない」(146教委)、「連携の効果が明確でない」(116教委)、「子供の個人情報の共有が難しい」(102教委)という意見が多かった。
子供の状況に応じた個別の学習支援や体験活動など、フリースクールの学習内容はその規模も含めて多岐にわたる。義務教育制度の対象外で、教委や学校側からは「実態が見えにくい」との指摘がある。
ただ不登校児への対策で協力を深める自治体もある。不登校児の割合が全国平均を上回った神奈川県教委は2006年、フリースクールと連携協議会を設置。不登校児のための相談会でフリースクールを紹介しているほか、教員を派遣し指導内容を経験するなどしている。同教委によると、手法は違っても子供に社会性を育ませるという目的を共有できたという。
文科省の専門家会議は報告書案で「教委や学校の指導と異なっていても、子供に不可欠な支援をしている場合がある」と指摘。両者に信頼関係を築くよう求め、モデル事業の実施に加え、こうした先進事例を周知する必要があるとした。活動内容の充実や質の保証のため、フリースクールが相互に取り組みを評価して外部に結果を公表する案も提示している。