2019年5月23日(木)

前田建設連合、道路運営は金の卵 民間初の優先交渉権獲得

2016/6/25 0:42
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私鉄が線路で稼ぐように企業が道路で稼ぐ時代が始まる。愛知県が有料道路8路線の運営を民間に任せる運営権売却(コンセッション)で、前田建設工業を中核にしたグループが24日、優先交渉権を獲得した。民間の知恵で道路は変わるのか。

前田建設グループは森トラスト、大和ハウス工業グループ、地元企業が参加。豪金融大手でコンセッションに強いマッコーリー・グループが協力する。オリックス陣営も応札したが、記者会見した愛知県の大村秀章知事は「大きな差があったのは運営権の対価と地域活性化の提案」と述べた。

有料道路の運営を民間委託するのは初めて。前田建設グループは最長30年の運営権に1377億円を支払い、10月から運営する。

8路線は名古屋市内から中部国際空港(常滑市)への移動や、知多半島へ海水浴に行くために使われる。名古屋市内―常滑市の約20キロで、普通車は620円。売上高は年180億円。春日井市の30歳代の女性は「給油のために道路から降りた。休憩場所も少ないし不便」と不満げだ。サービスを改善し、利用者を増やす余地は大きい。

前田建設の提案は、沿線に集客力のある施設を造って電車の利用者を増やす私鉄を思わせる。

中部国際空港がある島に150~300室程度のホテルを建設するほかパーキングエリアの隣に「食と安らぎ」がテーマの商業施設を設ける。約10万平方メートルで約35億円を投じる。インターチェンジの増設や施設改築、IT(情報技術)で事故を未然に防ぐ道路の整備を進める。沿線ならぬ「沿道」を活性化して利用者を増やし「料金を下げて経営を安定させたい」。

前田建設のコンセッション事業は2件目だ。1件目は東京急行電鉄などと運営権を得た仙台国際空港。7月の運営開始を前に格安航空会社(LCC)の誘致で客を増やしており、初年度から黒字を確保できる見通しだ。

道路は空港よりも安定して稼ぎやすいといわれる。空港は景気や為替、感染症の流行で客数が大きく変わる。地方の道路は住民の生活に必要不可欠なことが多く需要変動はあまりない。愛知の有料道路では収入が県の予想を下回っても最低収入が保証され、予想を上回ればその分は県に入る。企業のリスクは少ない。

政府はコンセッションがインフラの効率運営に有効とみて対象を広げていく。今後注目を集めるのは道路よりもさらに安定した収益が見込める上下水道だ。浜松市では下水道のコンセッションが予定され、前田建設も名乗りをあげる見通しだ。

国内では愛知の道路のほか仙台国際空港、関西国際空港・大阪国際(伊丹)空港でコンセッションがあり、前田建設はこのうち2件に関わる。2011年ごろから先行する欧米のノウハウを吸収してきた。18年までに茨城県で建設する研究所では、道路管理の技術を開発する。岐部一誠常務執行役員は「民間が公共インフラを活性化するアイデアはたくさんある」とみる。日本のインフラが大きく変わる転機を迎え、企業のビジネスチャンスが広がっている。

(岩野孝祐、小林宏行、寺井浩介)

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