工場跡 地域の学び場に 茨木市など 大学集積(まちは語る)
主婦と中国茶講座 住民との養蜂企画

2016/6/18 8:23
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大阪府北部の茨木市、高槻市などJR東海道線の駅周辺で大学の開設が相次いでいる。茨木市ではビール工場跡に2015年に立命館大学キャンパスが開設され、19年には白物家電工場跡に追手門学院大学キャンパスの一部が同市内の山手から移る。18歳人口の減少で私立大も広域から学生を集める必要が出てきた。茨木駅なら大阪・京都駅から15~20分程度の通学圏にある。地域密着を強めたキャンパス運営も特徴のひとつだ。

平日の朝、立命館大の大阪いばらきキャンパス(OIC)図書室に主婦ら14人が集まった。中国で4年暮らし、中国茶の知識と作法を学んだ市場静枝さんの中国茶講座だ。

この日は6種類の緑茶を順番にいれ、参加者は味わいながら茶の歴史も学ぶ。市場さんの隣で中国山西省から同大学に留学して会計を学ぶ冀薇(き・び)さんが茶の名前を中国語で発音する。冀さんは「住民の方々と親しくなれた」と話す。

■敷地に防災公園

立命館大は経営学部と政策科学部が茨木駅に近い新キャンパスに移転した。地域連携のため、大学図書館とは別に市民の寄贈本を基にした図書室を開放し、市民主催の講座に貸す。市場さんと冀さんを引き合わせたのも図書室の担当者だ。

OICは敷地の周囲に壁や塀がなく、学舎などを除き住民が自由に出入りできる。9万8000平方メートルの敷地のうち市が東側を所有し、市は広さ1万5000平方メートルの防災公園を設けた。公園は土と芝生で覆われ、学生と近所の子供が遊ぶ。

立命館大学大阪いばらきキャンパスには公園もある(大阪府茨木市)

立命館大学大阪いばらきキャンパスには公園もある(大阪府茨木市)

「地域連携と防災は開設前からの目的だった」。キャンパス開設準備室副室長を務めた服部利幸政策科学部教授は、大学が10年にサッポロホールディングスから工場跡を購入した時の議論を振り返る。

追手門学院大は茨木市中部の丘陵地にあるキャンパスの一部を、18年春開業予定の総持寺駅付近で東芝が工場跡に整備する環境配慮型都市「茨木スマートコミュニティ」に移す。敷地18万5000平方メートルのうち同大学が3分の1強の6万4000平方メートルを取得する。

同大学も新キャンパス周辺の住民との連携の検討を始めた。まちづくりLABO「ミツバチでまちづくり」と題した企画だ。ミツバチが集まるような植物を植え、住民が養蜂の現場を見たり、蜜を採ったりする経験を通じて環境を学ぶ。豊島真介教授は「ミツバチが生息しやすい環境を考え、人間も住みやすいまちづくりをめざす」と話す。

■学生数1.6倍に

立命館大など学生数の多い私大のキャンパス開設は、まちのにぎわいに影響する。茨木市では立命館大の開設後1カ月の15年5月時点で学生数は5200人。市内にはこのほか5大学・短大があり、学生数は14年5月に比べ1.6倍の1万5600人に膨らんだ。

工場とは異なり、大学などの学校法人には税の優遇措置があり、市税への増収効果は限定的だ。それでも、茨木市はOIC開設に関連し、周辺の道路や防災公園の建設などで12~16年度に65億円を負担した。

学生が卒業後も住み続けるなど、まちが若返れば市の負担は無駄にならず、風景も変わる。企業の生産体制の再編などで、都市部では工場がどんどん少なくなっている。まちづくりにも新たな発想が必要だ。

(大阪地方部 種田龍二)

高槻・吹田から立地拡大 若者を意識、街に勢い
 沿線では2010年に関西大学がJR高槻駅前の旧ユアサコーポレーション(現ジーエス・ユアサコーポレーション)工場跡に高槻市内2つ目のキャンパスを開設した。14年には大和大学が吹田駅前のJR社宅跡に開学し、開設ラッシュは高槻、吹田の間の茨木市に広がった。
 高槻市では、5大学・短大の学生数が14年に7000人を超えた。特に関西大の新キャンパスはJR高槻駅北東地区再開発の一環で「高槻の新しい玄関口」として一帯にマンション、百貨店が並ぶ。駅前の西武高槻店にはユニクロ、タワーレコードなどが入り、若い世代を意識した商業施設にリニューアルされるなど、まちにも勢いが出てきた。
 沿線の風景が変わる中、茨木市は子供の教育に力を入れる考え。福岡洋一市長は「全国トップ級の教育水準を目指す」と意気込む。
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