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団体様には頼れない(インバウンド関西)

「1600万人」時代へ(上) 増えるLCC、個人客台頭

関西の訪日外国人(インバウンド)消費に一服感が広がってきた。4月の百貨店の免税売上高は初めて前年を割った。それでも訪日リピーターは増加基調で、関西の表玄関、関西国際空港の外国人客は過去最高を更新。2020年には関西への訪日客は1600万人と15年比倍増するとの見方も出てきた。インバウンド経済が新たな段階に進むなか、受け入れ側の態勢の整備は急務だ。

自分で旅行手配

JTB西日本は10月にも日本に到着した訪日客向けの観光ツアーで中国語のガイド付きを初めて催行する。大阪、奈良、京都を巡るもので、「着地型」と呼ばれるこうしたツアーは従来、欧米からの観光客向けだった。

同社の訪日市場開発室の松岡日出人室長は「アジアからの訪日客は今、大きく変わろうとしている。この変化に対応することで新たな需要を取り込みたい」と話す。松岡氏がそう考えるようになったきっかけは同社が今春企画した大阪城ウオーキングツアー。終盤、参加したフィリピン人客から不満が漏れた。欧米客なら問題ない距離でもアジア客の中には苦痛を訴える人もいるという。

団体客が目立っていたアジアからの観光客だが、ここにきて個人旅行をする層が台頭。背景には関空に就航する格安航空会社(LCC)の急増がある。15年度の関空の旅客数全体は過去最高の2405万人。08年の金融危機以降で最低だった09年度から約8割増えたが、国際線の外国人客に限れば1100万人と3.8倍になった。LCCの便数が全体に占める割合も15年度冬ダイヤ期間は33%と8倍となり、10%程度とされる全国平均を大きく上回る。

座席間が狭いLCCの飛行時間はもっぱら4時間以内。利用客は圧倒的にアジア系だ。LCC客はパックツアーではなく、ネットで航空券と宿泊先を自分で手配する。添乗員が大勢の客を引き連れて、ドラッグストアや百貨店に押し寄せる光景は今後、減りそうだ。

「爆買いを当てにしない地道なファンづくりが一層大切になる」。近鉄百貨店の高松啓二社長は言う。同社では一定額以上を購入した外国人客を優遇する新たな会員組織の発足を検討中。「微信(ウィーチャット)」などでの口コミも活用しながら個人客の囲い込みを目指す。

「体験」にシフト

発信力のあるブロガーへのアプローチを強める動きも出てきた。関西広域連合や関西経済連合会などが3月に立ち上げた関西国際観光推進本部ではあるプラン作りが進んでいる。アジアのブロガーらを日本に呼び、関西の観光スポットを連れて回るツアーで、料金はもちろん無料だ。

第1弾は7月。韓国の著名ブロガー2~3人に声を掛けている。大阪や京都から関西一円へと振り分け、日本文化などへの理解を深めてもらう。政府や自治体はこれまで旅行会社への売り込みや旅行博への出展を重視してきた。ただ訪日客の主流が団体から口コミを重視する個人に変わりつつあり「ブロガーの影響力が高まっている」(同本部の森健夫統括次長)。

対応を迫られるのは観光に関連した業界だけではない。

阪神高速道路(大阪市)と大阪市消防局は今春、それぞれ電話を使った通訳サービスを手掛けるブリックス(東京・新宿)と契約した。「レンタカーで移動中だがパーキングエリアが分からない」「急病で困った」――。日本語を話せない外国人からの通話を逐次翻訳する。吉川健一社長は「緊急時に確実にサポートすることが安心感につながり、口コミでのリピーター獲得につながる」と意義を説く。

「爆買い」を卒業したインバウンドの個人客は今後、より一層、観光・レジャーに旅行目的がシフトする。受け入れ側は「量の拡大」から「質の変化」への対応が求められている。

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