京大と東北大、ピンと張られた分子鎖を定量する「羽ばたき型蛍光 Force Probe」を開発
発表日:2022年01月13日

ピンと張られた分子鎖を定量する「羽ばたき型蛍光 Force Probe」の開発
―高分子材料の中で力のかかった分子鎖の比率を蛍光イメージングで計測する―
■概要
京都大学大学院理学研究科の齊藤尚平准教授・小谷亮太博士(現・東レ株式会社)、東北大学材料科学高等研究所・藪浩准教授(ジュニア PI・東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー)らの研究グループは、約100pN(ピコニュートン)(注1)という微小な力に応答して蛍光色を変化させる分子として、羽ばたき型の蛍光 Force Probe(注2)を開発しました。これは、亀裂などの破壊が起こる前に、高分子材料の中でどのくらいの比率の分子鎖がピンと張られているかを知る上で最適な新しいタイプの蛍光 Force Probeです。
一般に高分子材料が変形して特定の分子鎖に無理な力がかかると、ついには化学結合が切れてしまい、材料の破壊が進みます。しかし、そうなる前のタイミングでは、およそ100pNの力が分子鎖にかかってピンと張られます。本研究グループは、剛直な2つの翼を柔軟な関節でつなぎ合わせた独自の「羽ばたく蛍光分子」FLAP(注3)が、この領域(理論値で約100pN)の力に可逆応答する蛍光 Force Probeとして機能することを見出しました。FLAPを分子鎖に導入しておくことで、ピンと張られた分子鎖の比率に応じて局所の蛍光スペクトルが変化します。また、実際に高分子材料の延伸実験に運用した結果、分子鎖に伝わる力の偏りに関して新しい高分子物理学の知見が得られました。このような分子レベルの情報は、蛍光スペクトルの形に反映されるため、顕微鏡技術と組み合わせれば、動画撮影による時間的変化や空間分布の計測もできます。
今後は、(1)高分子力学におけるさらなる分子描像の解明を進めるとともに、(2)生体材料への応用によるライフサイエンス研究における使用や、(3)流体の内部や流路の壁面にかかる力を定量する技術へ展開できます。
本研究成果は2022年1月13日に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されます。
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参考画像
https://release.nikkei.co.jp/attach/625215/01_202201121637.png
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/625215/02_202201121637.pdf
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