慶大、柔らかく伸び縮みする半導体デバイスで世界最高周波数の駆動に成功
発表日:2021年12月09日
柔らかく伸び縮みする半導体デバイスで世界最高周波数の駆動に成功
-未来のウェアラブルは伸縮性・ワイヤレス-
慶應義塾大学理工学部電気情報工学科専任講師の松久直司とスタンフォード大学化学工学科ポスドク研究員(研究当時)の Dr. Simiao NIU、教授の Prof. Zhenan BAO らの研究グループは、柔らかく伸び縮みする半導体デバイスを世界で初めて13.56MHz(非接触の交通カードでも用いられる周波数)もの高周波で動作させることに成功しました。これまで伸縮性半導体デバイスの動作周波数は100Hz程度に留まっていたので、10万倍もの飛躍的な性能向上となります。
薄いゴムシートのような柔らかい電子デバイスは、皮膚にピタッと貼り付けて装着できる着け心地などに優れた次世代ウェアラブルデバイスとしての活用が期待されています。重要な課題の一つにどのように電源供給するかという問題がありましたが、本研究成果の高周波ダイオードデバイスにより、無線で電力伝送・通信ができるようになりました。さらに本研究で開発した伸縮性半導体用電子材料はセンサや発光素子などへの転用も可能なため、柔らかいウェアラブルデバイス全体の性能向上が見込まれ、実用化が一歩近づきました。
本研究成果は2021年12月8日、「Nature」に掲載されました。
1.本研究のポイント
・伸び縮みする半導体デバイスで世界初の13.56MHzでの高周波動作に成功。
・開発のキーは、伸縮性と電気特性(移動度、導電性、仕事関数など)を両立する様々な材料設計。
・次世代ウェアラブルデバイスのプロトタイプとして、無線で伸縮性センサの信号を伸縮性ディスプレイに表示するシステムを実現。
2.研究背景
ウェアラブルデバイスによるヘルスケアシステムは、装着するだけで長期にわたって様々な生体情報を取得できるので病気の早期発見・予防などに役立ちます。その重要性は、新型コロナウィルスなどの感染症や高齢化の進行によりますます明らかになっています。今身の回りにあるウェアラブルデバイスは腕時計や指輪のような硬くて小さい形をしていますが、次世代のウェアラブルデバイスとして、薄いゴムシートのような柔らかい電子デバイスが期待されています。我々の体と同じように柔らかく、皮膚にピタッと密着するので、体全体に長時間装着しても違和感なく高精度な生体情報を取得することができます。さらに柔らかい電子デバイスは、仮想・拡張現実(VR・AR)用の次世代インターフェースやロボットの電子人工皮膚としての応用も期待されています。
柔らかい電子デバイスを実現するために、近年、世界中の研究者が元々電気を流さないゴムのような柔軟な材料を、伸縮性の導体や半導体(※1)などの電子材料に作り替えていく研究を進めています。松久も世界最高導電率の印刷できる伸縮性導体材料の開発などに取り組んできました[参考文献1]。最近、生体のような柔らかさを示しながら、電気特性は最新の半導体材料とほぼ同じの高性能な伸縮性半導体材料が発明されました[参考文献2]。これを用いて様々な伸縮性半導体デバイス(※2)が実現されましてきました。しかしながら、これらの駆動周波数は100Hz程度と遅く、MHz以上の周波数で動く現代の電子デバイスには遠く及ばず社会での活用の大きな壁となっていました。
*以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/623463/01_202112091656.pdf
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