東大とNIMSなど、超高温・大面積ナノ薄膜装置(超高温LB膜製作装置)の開発に成功
発表日:2021年12月09日
超高温・大面積ナノ薄膜装置(超高温LB膜製作装置)の開発に成功
-200℃にも迫るウエットプロセスで高配向有機半導体ナノ薄膜の製造が可能に-
1.発表者:
伊藤 雅人(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 博士課程2年生)
山下 侑(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 特任研究員/物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)超分子グループ 博士研究員 兼務)
森 泰蔵(東京大学物性研究所 助教)
竹谷 純一(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 教授/物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)MANA主任研究者(クロスアポイント))
渡邉 峻一郎(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 准教授)
有賀 克彦(物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)MANA主任研究者/東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 教授(クロスアポイント))
2.発表のポイント:
◆ 水面に展開された分子は、速やかに広がり分子レベルの極薄い膜状の集合体を形成することが知られており、精緻に配列した分子を使ったデバイスの研究開発が盛んに行われています。しかしながら、水面を形成する液体は「水」に限定されており、室温付近のプロセスに限定されていました。
◆ 本研究グループは、100℃より高い温度でも液体であるイオン液体(注1)を用いることで、室温付近に限定されたLB法を200℃に迫る高温まで拡張することに成功しました。
◆ 本手法を用いて、高い配向性(注2)を有する有機半導体ナノ薄膜の製造が可能となったことから、分子デバイス・バイオデバイスなどへの応用研究に発展することが期待されます。
3.発表概要:
東京大学大学院新領域創成科学研究科、同連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター、同物性研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)、協和界面科学株式会社の共同研究グループは、100℃を超える高温でも液体のイオン液体を用いたウエットプロセスである超高温Langmuir-Blodgett法(LB法、(注3))及び、自動で薄膜製造が可能な汎用的な製造装置の開発に成功しました。本手法を200℃付近の超高温プロセスで電子輸送性が向上する有機半導体分子(注4)に適用した結果、高い配向性を有するナノ薄膜の大面積製造に成功しました。
今回開発した超高温LB法及び汎用的な製造装置は、LB法の利点である、液面上での精緻な分子の集合体形成というコンセプトを踏襲しつつ、プロセス可能な温度域を大幅に拡張することができます。これまでプロセス温度の制約により検討されていなかったさまざまな分子の集合体形成が可能となり、分子を用いたエレクトロニクスへの応用研究が加速することが期待されます。
本研究成果は、米国科学雑誌「Langmuir」2021年12月7日版に掲載されました。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/623459/01_202112091647.pdf