東大と理研、磁性材料で新しい光のねじれ現象が生じることを見出し電圧と磁場によって偏光を自在に制御できることを実証
発表日:2021年11月18日
磁石がつくる奇妙な光のねじれ現象
~新しい光の偏光制御の原理を確立~
1.発表者:
井口 照悟(東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 博士課程(研究当時))
関 真一郎(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 准教授/理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループ 客員研究員)
十倉 好紀(理化学研究所創発物性科学研究センター センター長/東京大学 卓越教授/国際高等研究所東京カレッジ)
高橋 陽太郎(東京大学 大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター 准教授/理化学研究所創発物性科学研究センター 創発分光学研究ユニット ユニットリーダー)
2.発表のポイント:
◆ 旋光性複屈折と呼ばれる新奇な偏光(光の振動面)のねじれ現象の実現に成功しました。
◆ 旋光性複屈折が、あたかも物質が回転しているように見なせる奇妙な旋光性(注1)であることを明らかにしました。
◆ 「自然旋光性」と「旋光性複屈折」という二つの旋光性を電圧と磁場で制御することで、偏光を自在に制御できることを実証しました。この原理を利用すると、高い自由度を持つ偏光制御デバイスへの応用が期待されます。
3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科の高橋陽太郎准教授(理化学研究所創発物性科学研究センター創発分光学研究ユニットユニットリーダー)のグループは、関真一郎准教授(理化学研究所創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループ 客員研究員)、理化学研究所創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長のグループと共同で、マルチフェロイクスと呼ばれる磁性材料で旋光性複屈折と呼ばれる新しい光のねじれ現象が生じることを見出し、電圧と磁場によって偏光を自在に制御できることを実証しました。
旋光性とは物質が偏光(光の振動面)をねじる現象を指します。現在までにマイケル・ファラデーによって発見されたファラデー効果と、ビオ・サバールやルイ・パルツールが見出した自然旋光性が知られています。これらの旋光性は光通信や糖度測定などさまざまな用途に利用されています。これら既知の現象とは別に「旋光性複屈折」と名付けられた第3の旋光性が生じることが指摘されていましたが、どのような偏光のねじれが生じるかについては検証されていませんでした。
研究グループは、マルチフェロイクス(注2)と呼ばれる強誘電性(注3)を持つ磁石を透過した光の偏光を測定することで、旋光性複屈折と自然旋光性によってテラヘルツ帯で巨大な旋光が生じることを発見しました。偏光を精密に解析することで、旋光性複屈折による光のねじれが本質的に既知の旋光性とは異なることを明らかにしました。更に、電場と磁場で二つの旋光性を独立に制御できることを実証しました。
今回の成果は、旋光性複屈折を用いることでより高い自由度で偏光の制御が可能であることを示しています。または、将来の高速通信への応用が期待されているテラヘルツ帯の光制御にマルチフェロイクスが役立つことが期待されます。
本研究成果は2021年11月18日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されます。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/622019/01_202111181505.pdf