横浜市大・量研など、血液がん発症に関わるヒストンメチル化酵素NSD2の発がん性変異体の活性亢進メカニズムを明らかに
発表日:2021年11月15日
ヒストンメチル化酵素NSD2は発がん性変異により安全装置が外れ、制御不能になる
横浜市立大学大学院医学研究科 生化学 仙石 徹 講師、佐藤 光 助教、緒方 一博 教授、同大学大学院生命医科学研究科 西澤 知宏 教授、量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門量子生命科学研究所生体分子シミュレーショングループ Amarjeet Kumar 博士研究員、河野 秀俊 グループリーダー、東京大学理学系研究科 生物科学専攻 濡木 理 教授らの研究グループは、血液がん発症に関わるヒストンメチル化酵素NSD2の発がん性変異体の活性亢進メカニズムを明らかにしました。この発見はNSD2の変異が関係する血液がんの治療薬開発につながるものと期待されます。
本研究成果は、Nature Communicationsに掲載されます。(日本時間2021年11月15日19時)
【研究成果のポイント】
● 血液がん発症に関わるヒストンメチル化酵素NSD2と基質ヌクレオソームとの複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いて解明
● NSD2の発がん性変異による活性亢進メカニズムを解明
● NSD2変異が関係する血液がんの治療薬開発への貢献が期待される
【研究背景】:
近年、一部の血液がんの発症には、ヌクレオソーム(注1)中のヒストンH3をメチル化する酵素NSD2の異常な活性亢進が関わっていることがわかってきました。例えば、リンパ性白血病の一部ではNSD2にメチル化活性を亢進させるアミノ酸変異(E1099K)が見つかっています。一方、多発性骨髄腫の20%では染色体転座t(4;14)(注2)によりNSD2タンパク質の量が異常に増加しています。
これらの症例では、NSD2の基質であるヒストンH3の36番目のリジン残基(H3K36)が異常に高いレベルでメチル化を受けています。このH3K36のメチル化は遺伝子発現の調節にかかわることが知られており、H3K36メチル化の異常は遺伝子発現パターンを変化させることで造血細胞のがん化につながると考えられています。
そこで、本研究ではこのNSD2の発がん性変異E1099Kがどのようにヒストンメチル化活性を異常亢進させるかを調べました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/621639/01_202111151112.pdf