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茨城大と東大、CO2からワンパスで低級オレフィン等の有用物質を合成する触媒を開発

発表日:2021年09月30日

CO2からワンパスで低級オレフィン等の有用物質を合成する触媒を開発

金属酸化物とモルデナイトの組み合わせを発見 10気圧で高効率実現

茨城大学大学院理工学研究科(工学野)の多田 昌平 助教、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の伊與木 健太 講師らの研究グループは、触媒の構造と反応条件に着目することで、ワンパス(一つの反応器)で二酸化炭素(CO2)を高効率に低級オレフィンに変換する触媒を開発しました。

研究グループでは、削減すべきCO2をメタノールに変換する前段の反応(300℃以上、金属酸化物触媒)と、得られたメタノールを低級オレフィン等の有用物質に変換する後段の反応(400℃前後、ゼオライト触媒)を進行させる触媒を物理的に混合したタンデム型触媒を開発しました。ゼオライト触媒としてモルデナイトを採用した場合に、10気圧という比較的低圧の反応ガスで高効率に低級オレフェンの変換が実現することを発見しました。

今後は、ゼオライト触媒の形態制御を通して、副反応(CO生成、低級アルカン合成、高級炭化水素合成)が進行しない新規触媒を開発し、さらに効率のよい低級オレフィン合成の実現をめざします。

この成果は、2021年9月30日付でエルゼビアの雑誌International Journal of Hydrogen Energyのオンライン版に掲載されます。

■背景

気候変動の対策が喫緊の課題となっている中、2050年に到来するゼロ・エミッション社会を実現するためには、排出され続ける二酸化炭素(CO2)を効率よく回収・再利用することで、CO2の循環バランスがとれた、いわゆる「カーボン・ニュートラル」な状態を実現させることが重要となります。なかでも、近年、CO2から化学品原料や燃料といった有用物質を効率よく合成するCO2水素化触媒の開発が盛んに進められています(図1)。これは、再生可能エネルギー由来の電力を用いた水の電気分解によって水素を製造し、その水素とCO2をもとに有用物質を合成する試みです。私たちが現在使用している化学品や燃料は化石資源を使って合成していますが、これらの合成にCO2の再生技術が利用できれば、脱炭素化の実現に大きく近づきます。それを十全に進めるためには、既存の技術の延長に頼るだけでなく、革新的な触媒技術と社会システムを創出することが必要です。

※図1は添付の関連資料を参照

CO2からの有用物質合成として有望なプロセスの一つに、CO2水素化反応によるメタノール合成反応とメタノール変成反応を連続的に行うものがあります(図2(a))。前段のCO2水素化反応によるメタノール合成に関しては、2010年頃から複数の実証プラントが世界規模で稼働し始めています。また、後段の反応であるメタノールから有用物質への転換反応(メタノール変成反応)もある程度確立されています。このシステムでは、複数のプラントで多段階プロセスを行うことを想定していますが、将来的にはより少ない投入エネルギーで合成できる手法の確立が求められます。そこで進められているのが、複数種類の触媒を物理的に接続させることで、CO2水素化反応から始まる多段階反応をワンパス(一つの反応器)で進行させる「タンデム型触媒」の開発です(図2(b))。

※図2は添付の関連資料を参照

タンデム型触媒によるワンパス合成を実現させる上での最大の課題は、前段反応と後段反応の運転条件を揃えることにあります。前段反応であるCO2水素化反応によるメタノール合成は、銅の粒子を金属酸化物の表面に配置・固定した固体触媒を使用し、250℃前後の低温域で、高圧条件にて進行します。一方、後段反応であるメタノール変成反応には、400℃前後にてゼオライト[注1]を触媒として使用します。

これに対し、最近の研究では、従来よりも高温でメタノール合成を可能とする金属酸化物触媒が台頭してきました。これにより、削減すべきCO2をメタノールに変換する前段の反応(300℃以上、金属酸化物触媒)と、得られたメタノールを低級オレフィン等の有用物質に変換する後段の反応(400℃前後、ゼオライト触媒)を物理的に混合したタンデム型触媒が実現できれば、上記二つの反応を連続して行い、CO2からワンパス(1つの反応器)で多様な有用物質を得ることができます。

これまでに報告されているタンデム型触媒(金属酸化物触媒+ゼオライト触媒)では、ゼオライト触媒としてZSM-5(Zeolite Socony Mobil-5)もしくはSAPO-34のみが使用されています。これらのゼオライトはいずれも触媒中に比較的小さい細孔が空いています。その細孔は直径で3.5~5.5Å(オングストローム、10-10メートル)程度です。これに対し、メタノール分子の大きさは3.8~4.1Å程度であることから、メタノール分子はゼオライトの細孔の中にある反応場[注2]にアクセスが可能です。この反応場にて、メタノール分子が有用物質に変換されることが知られています。さらに、細孔の大きさによってどのような有用物質を作りたいかを選択することができます。例えば、ゼオライト触媒の細孔の大きさを直径5Å以下にすれば、5Åよりも大きな化学物質を作れなくなり、結果として5Å以下のものを選択的に合成することができます。この場合、低級オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン;大きさ5Å)などがターゲットになります。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

図1

https://release.nikkei.co.jp/attach/618541/01_202109281528.jpg

図2

https://release.nikkei.co.jp/attach/618541/02_202109281528.jpg

添付リリース

https://release.nikkei.co.jp/attach/618541/03_202109281528.pdf

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