東大、有機半導体で「絶縁体―金属転移」を実証
発表日:2021年09月07日
世界初、有機半導体で「絶縁体―金属転移」を実証
-わずか1分子の厚さに電荷を閉じ込めた有機二次元ホールガスを実現-
1. 発表者:
糟谷 直孝(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 博士課程3年生)
渡邉 峻一郎(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 准教授/産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ客員研究員 兼務(研究当時))
竹谷 純一(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 教授/連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター(MIRC)特任教授 兼務/産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ客員研究員 兼務(研究当時)/物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)MANA主任研究者(クロスアポイントメント))
2. 発表のポイント:
◆ 不純物のない絶縁性の固体物質に高密度に電荷を注入すると、絶縁体から金属に転移します。しかし、有機半導体における「絶縁体―金属転移(注1)」は、20年以上もの間、実験的に実証されていませんでした。
◆ 本研究グループが開発したわずか1分子厚さの有機半導体単結晶薄膜に、高密度に電荷を注入することで、二次元ホールガス(注2)状態が形成され、有機半導体の絶縁体―金属転移を世界で初めて観測することに成功しました。
◆ 有機半導体の絶縁体―金属転移の実証により、電子相転移の基礎研究に加えて、高速電子デバイスや量子エレクトロニクスへの応用が加速すると期待されます。
3. 発表概要:
東京大学大学院新領域創成科学研究科、同連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(注3)、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは、極めて高純度かつ欠陥のない有機半導体単結晶の1分子層(厚さ4nm)に高密度にキャリアを注入することで二次元ホールガスが形成され、さらに4分子当たり1電荷に相当する高密度のホールを誘起したところ、「絶縁体―金属転移」を世界で初めて実験的に観測することに成功しました。今回使用した有機半導体薄膜は量産性やコストに優れる印刷プロセスによって作製しているため、これまでより簡便に二次元電子系を実現することが可能となり、電子相転移の基礎研究に加え、高速電子デバイスや量子エレクトロニクスデバイスへの応用研究が加速することが期待されます。
本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Materials」2021年9月6日版に掲載されます。本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス(JP18J21908)」(研究者代表者:竹谷純一)および、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業「コンデンスドプラスチックの電子論と機能性の創成(JPMJFR2020)」(研究代表者:渡邉峻一郎)の一環として行われました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/617303/01_202109061447.pdf
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