熊本大・東大・高輝度光科学研究センター、XMCDスペクトルだけから元のX線吸収スペクトルを再現することに成功
発表日:2021年07月09日
世界初!XMCDのベイズ分光で、隠れた元スペクトルを再現
-磁石材料の新しいスペクトル解析法の開発-
●磁石材料のX線磁気円二色性(XMCD:X-ray Magnetic Circular Dichroism)スペクトルから磁性評価をするため、ベイズ推定を組み込んだ新しい解析法(ベイズ分光法)を開発しました。
●ベイズ分光法により、左右円偏光X線で得られる2つの元スペクトルの差分であるXMCDスペクトルだけから、元のX線吸収スペクトルを再現することに世界で初めて成功しました。
●これまで点推定であった磁性を表す物理量(磁気モーメント)の誤差評価もベイズ分光法で実現しました。今後、磁性材料の研究に貢献することが期待できます。
(概要説明)
熊本大学大学院自然科学教育部の山崎大雅(博士前期課程2年)、同産業ナノマテリアル研究所の赤井一郎 教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡田真人教授らの研究グループは、磁石材料のニッケルフェライト(注1)を想定した人工XMCDスペクトル解析にベイズ分光法(注2)を適用しました。その結果、左右円偏光X線(注3)で計測されるX線吸収(XA:X-ray Absorption)スペクトル(注4)の差分であるXMCDスペクトル(注5)だけから、元のXAスペクトルを再現することに成功しました。さらに、そのスペクトル解析で得た各スペクトル成分のスペクトル強度の事後確率分布(注6)から、磁気モーメント(注7)とその誤差の推定に成功しました。今後本手法は、新規材料の磁気特性の解明に応用され、磁石材料研究に貢献することが期待されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用」(研究総括:雨宮慶幸(高輝度光科学研究センター 理事長))の研究課題「データ駆動科学による高次元X線吸収計測の革新」(研究代表者:赤井一郎(熊本大学産業ナノマテリアル研究所教授))と同領域の研究課題「ベイズ推論とスパースモデリングによる計測と情報の融合」(研究代表者:岡田真人(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授))の支援を受けて行いました。本研究成果は「Science and Technology of Advanced Materials: Methods」に令和3年7月7日に掲載されました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/614305/01_202107091418.pdf