理研・東大・阪大、ニューラルネットワークの表現能力を応用し固体系の電子状態に関する第一原理計算を精密に行う手法を提唱
発表日:2021年05月21日

結晶の世界をのぞくニューラルネットワーク
-固体系のミクロな量子多体物性に迫る-
理化学研究所(理研)開拓研究本部Nori理論量子物理研究室の吉岡信行客員研究員(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻助教)、フランコ・ノリ主任研究員、大阪大学量子情報・量子生命研究センターの水上渉特任准教授(常勤)の共同研究チームは、機械学習におけるニューラルネットワーク[1]の表現能力を応用して、固体系の電子状態に関する第一原理計算[2]を精密に行う手法を提唱し
ました。
本研究成果は、複雑な電子構造を持つ固体結晶の解析を可能にするだけでなく、物質設計や量子多体系[3]に関する一般的理解にも貢献すると期待できます。固体結晶の格子構造や導電性などの性質は、原子を取り巻く電子の状態によって決定されます。ただし、量子力学に従う多数の電子状態のシミュレーションは難しく、特に電子相関[4]が強い領域における有効な第一原理計算手法は確立されていません。
今回、共同研究チームは、ディープラーニング[1]において強力な非線形関数[5]であるニューラルネットワークが、量子状態でさえも効率的に表現する柔軟性を持つことに着目し、基底状態とバンド構造[6]に関する新たなアルゴリズムを構築しました。この手法は、従来の手法が破綻してしまうほど電子相関が強い物質(水素鎖)や、高速情報処理デバイスの材料となる物質(グラフェン)でも、高精度なシミュレーションが可能です。
本研究は、科学雑誌『Communications Physics』オンライン版(5月21日付:日本時間5月21日)に掲載されます。
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