東大と都立大、リグニンから芳香族炭化水素への変換に向けた新触媒を開発
発表日:2021年04月20日
リグニンから芳香族炭化水素への変換に向けた新触媒を開発
~再生可能資源からの省エネ型基幹化成品製造に期待~
1. 発表者:
金 雄傑(東京大学 大学院工学系研究科化学生命工学専攻 助教)
月村 梨緒(東京大学 大学院工学系研究科化学生命工学専攻 修士課程2年生)
相原 健司(東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 博士課程3年生)
三浦 大樹(東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 准教授)
宍戸 哲也(東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 教授)
野崎 京子(東京大学 大学院工学系研究科化学生命工学専攻 教授)
2. 発表のポイント:
◆温和な条件下で幅広いフェノール類からアレーンへの選択的加水素分解反応を可能にするメタリン酸アルミニウム担持白金触媒を開発した。
◆本触媒を用いると、再生可能資源であるリグニン由来のフェノール類からエチルベンゼン等の重要工業原料を合成可能である。
◆今後、再生可能資源から重要な工業原料である芳香族炭化水素 BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)合成への応用が期待される。
3. 発表概要:
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻の金雄傑助教と野崎京子教授らは、東京都立大学大学院都市環境科学研究科宍戸哲也教授らとの共同研究により、再生可能資源であるリグニン(注1)に多く含まれるフェノール類(注2)から基幹化成品として重要な芳香族炭化水素への加水素分解反応(注3)に高い活性及び選択性を示す触媒(注4)を開発しました。従来の触媒系は、幅広い基質適用性、基質の高い転化率及び芳香族炭化水素への高い選択性を達成するために、一般的に過激な反応条件を必要とします。
今回新たに開発したメタリン酸アルミニウム(注5)担持白金ナノ粒子触媒を用いると、100℃から150℃の反応温度、わずか10%の水素分圧下で(水素/アルゴン = 1/9、1気圧)、幅広いフェノール類から対応する芳香族炭化水素類を与えました。実際、本触媒系をリグニンモデル化合物に適用すると、その加水素分解反応が効率的に進み、高い選択性及び収率でエチルベンゼン等の重要基幹化成品を得ることができました。また、本触媒はろ過により容易に回収可能であり、劣化が見られたものの、数回の再使用が可能でありました。
今後、本触媒は再生可能資源であるリグニンから重要基幹工業原料であるBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)製造への応用が期待されます。また、従来の触媒系に比べ、温和な条件下で、より幅広いフェノール類に適用可能であるため、合成化学への応用も期待されます。
本研究成果は、2021年4月20日(日本時間午前0時)に英国科学誌「Nature Catalysis」のオンライン版に掲載される予定です。
なお、本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 科学研究費補助金(JP18H05259)、学術研究助成基金助成金(JP19K15357)、および科学研究費補助金 新学術領域研究「分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製」(JP20H04803、JP17H06443)による支援を受けて行われました。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/608700/01_202104151455.pdf