横浜市大と東大、神経回路形成因子 LOTUSの欠損により記憶機能が低下することを発見
発表日:2021年03月03日
神経回路形成因子 LOTUSが記憶機能を制御する
~記憶障害の改善に期待~
~英科学誌『Scientific Reports』に掲載(英国 3月3日10時、日本時間 3月3日19時付)~
横浜市立大学大学院生命医科学研究科の竹居光太郎教授と東京大学大学院農学生命科学研究科の喜田聡教授の研究グループは、神経回路形成因子 LOTUSが、記憶に関連する脳部位である海馬において神経細胞のつなぎ目であるシナプスの形成を促進し、記憶機能を制御することを発見しました。
■研究成果のポイント
●神経回路形成因子 LOTUSが欠損するとシナプスが減少し、記憶機能が低下することが明らかになった。
●LOTUSのさらなる解明により健忘症や認知症の予防と改善に期待
■研究の背景
高齢者の5人に1人は認知症を発症する可能性があると言われており、高齢化に伴う記憶障害は大きな社会問題となっています。加齢による記憶障害を引き起こす因子の一つとしてNogoという分子が知られています。Nogoは、その受容体であるNogo受容体-1(NgR1)に結合すると、記憶形成に重要な役割を担うシナプスを減少させ、記憶形成能力を低下させる因子として知られています。そして、NogoやNgR1は加齢に伴い発現量が増加し、記憶機能も低下することが報告されています。
本研究グループの竹居光太郎教授らは、嗅覚情報を伝える神経回路の形成に重要な分子として神経回路形成因子 LOTUSを2011年に発見しました。LOTUSは強力なNgR1拮抗物質としてNogoの作用を抑制することで、NogoとNgR1の結合を介して起こる軸索伸長阻害を遮断し、神経回路形成や神経再生を促進することが明らかとなっていました。また、LOTUSは健常な成人の脳には豊富にありますが、加齢に伴い徐々に減少します。このため、その減少が一因となって記憶機能の低下が起きると想定されますが、シナプス形成や記憶機能にLOTUSがどう影響するかは明らかとなっていませんでした。そこで本研究グループの竹居光太郎教授と大学院生の西田遼平らは、LOTUS遺伝子欠損マウスを用いて、LOTUSがシナプス形成や記憶機能に与える影響について検討しました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/605861/01_202103021206.pdf