東工大・東大・東邦大など、約6,600万年前の巨大クレーター内から小惑星由来の元素を高濃度で含む地層を発見
発表日:2021年02月25日

恐竜を絶滅させた小惑星の痕跡を衝突クレーター内に発見
-全球に降り注いだイリジウムを含む衝突ダスト-
【要点】
○約6,600万年前の巨大クレーター内から、小惑星由来の元素を高濃度で含む地層を発見
○イリジウムを多く含むダストは衝突により形成された堆積物の最上部に分布
○大規模衝突による全球的な物質の拡散過程を理解するための重要な証拠
【概要】
東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の石川晃准教授、海洋研究開発機構 高知コア研究所の富岡尚敬主任研究員、東京大学 大学院理学系研究科の後藤和久教授、東邦大学 理学部の山口耕生准教授は、ブリュッセル自由大学のSteven Goderis(スティーブン・ゴデリス)教授、イタリア・パドバ大学の佐藤峰南博士らとの国際共同研究により、約6,600万年前の白亜紀/古第三紀境界(用語1)に形成されたメキシコのチチュルブ・クレーター内部の掘削試料を対象に、小惑星物質中に特徴的に含まれる元素(イリジウム、(用語2))の化学分析を行い、小惑星物質が衝突由来の堆積物最上部に濃集していることを明らかにした。
本研究成果は、この衝突現場と世界中から報告されている白亜紀/古第三紀境界前後に堆積した地層の時間軸を正確に揃える重要な基準となる。今後、大規模な小惑星衝突によって飛散した物質がどのように地球全体へ拡散したのかを手がかりにすることで、恐竜絶滅前後の環境変動がより詳細に復元されることが期待される。
研究成果は2021年2月24日付(米国東部時間)の国際学術誌「Science Advances」に掲載される。
●研究の背景
2016年4~5月、国際深海科学掘削計画(IODP、(用語3))の第364次研究航海(Expedition364、(用語4))により、約6,600万年前の白亜紀/古第三紀境界に形成されたメキシコ・ユカタン半島沖のチチュルブ・クレーター(直径約200km)内部のピークリング(用語5)と呼ばれる構造上で掘削が行われた(図1)。得られた掘削コア試料は全長約830mにおよび、上部から小惑星衝突後の時代(古第三紀)の堆積物、衝突由来の堆積物、掘削海域の基盤岩類から構成されている。
これまで、この掘削コア試料を用いた研究により、大規模な小惑星衝突に伴うクレーターの形成プロセスや直後の環境変動、生態系の回復速度などが詳細に復元されてきた(Morgan et al.2016;Lowery et al.2018;Riller et al.2018;Gulick et al.2019 など)。しかし、衝突を引き起こした小惑星由来の物質がクレーター内部にどのように分布しているかについては、明らかになっていなかった。
※図1は添付の関連資料を参照
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
図1
https://release.nikkei.co.jp/attach/605508/01_202102221458.jpg
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/605508/02_202102221458.pdf