東大と大阪市大、電子環状反応を触媒する酵素を発見
発表日:2021年02月15日
こんな反応をする酵素があったのか?
~電子環状反応を触媒する世界初の酵素の発見~
1.発表者:
張 ●(◇)(東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 博士課程 3年)
湯澤 賢(東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 特任助教:当時)
唐 薇麗(東京大学生物生産工学研究センター 特任研究員:当時)
品田 哲郎(大阪市立大学大学院理学研究科物質分子系専攻 教授)
西山 真(東京大学生物生産工学研究センター 教授)
葛山 智久(東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 教授)
◇発表者名の正式表記は添付の関連資料を参照
2.発表のポイント:
◆放線菌から単離されたアルキルベンゼン(注1)骨格を作るための遺伝子を特定し、アルキルベンゼンを試験管内で合成することに成功しました。
◆アルキルベンゼンの生合成経路の全容を明らかにするとともに、その鍵となる電子環状反応を触媒する「電子環化酵素」を世界で初めて特定し、その反応機構を提唱しました。
◆自然界に眠るゲノム配列情報から様々な「電子環化酵素」を発掘して解析することで、アルキル鎖の異なるアルキルベンゼンを自由自在に設計できるようになる可能性があります。
3.発表概要:
微生物の一種である放線菌の中には、特徴的なアルキルベンゼン骨格を含む天然化合物を生産するものがいます(参考文献1)。アルキルベンゼンは、合成洗剤の原料や合成潤滑油として広く利用されており、これまでにも化学的に合成する方法は報告されていましたが(参考文献2)、生物がアルキルベンゼンをどのように作るかは不明のままでした。
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻の分子育種学研究室と生物生産工学研究センター細胞機能工学研究室、大阪市立大学大学院理学研究科物質分子系専攻分子変換学研究室の共同研究グループは、アルキルベンゼンを作るのに必要な全ての遺伝子を特定し、それらの働きを明らかにしました。さらに、同グループは、アルキルベンゼンを作る鍵となる酵素を発見し、「電子環化酵素」と呼ぶことを提案しました。
この発見により、自然界に眠るゲノム情報から様々な「電子環化酵素」を発掘して解析することで、アルキル鎖の異なるアルキルベンゼンを自由自在に設計し、新たな化学素材として開発できるかもしれません。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
発表者名の正式表記
https://release.nikkei.co.jp/attach/605110/01_202102151524.pdf
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/605110/02_202102151524.pdf