東大、テキサス大との共同研究で新型コロナウイルス感染モデルにおける嗅上皮の変化について発表
発表日:2021年02月02日
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染モデルにおける嗅上皮の変化
~COVID-19による嗅覚障害の病態解明や治療法開発の加速に期待~
1.発表者:
浦田 真次(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 届出研究員/テキサス大学医学部ガルベストン校 耳鼻咽喉科 博士研究員)
岸本 めぐみ(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 届出研究員/テキサス大学医学部ガルベストン校 病理学 リサーチアソシエイト)
山岨 達也(東京大学大学院医学系研究科 外科学専攻 耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学 教授/東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 科長)
2.発表のポイント:
◆COVID-19モデル動物を確立し、SARS-CoV-2感染後の嗅上皮組織について解析を行いました。
◆SARS-CoV-2感染における嗅上皮傷害は、(1)ウイルス暴露量は関係ない、(2)ウイルス感染後早期に嗅上皮脱落が生じる、(3)感染後21日でも一部の嗅上皮は再生が不完全である、ことが明らかになりました。
◆本研究成果を活用することで、COVID-19モデル動物の解析が進み、嗅覚障害の病態の解明やそれに基づく治療法の開発が加速すると期待されます。
3.発表概要:
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされるCOVID-19の症状に嗅覚障害があります。SARS-CoV-2による嗅覚障害は初期症状の1つとして知られているだけでなく、発症後約2か月経過しPCRが陰性化した方の18~45%で何らかの嗅覚障害が残存していることも明らかになっています。一般的に傷害された嗅上皮(鼻の奥にある匂いを感知する部位)は一度脱落し菲薄しますが、再生して正常厚に戻ります。しかし傷害が重度の場合、嗅上皮は正常化しないことが知られています。SARS-CoV-2が嗅上皮に感染した場合、嗅上皮が脱落することがわかっていましたが上皮厚が正常化するかは不明でした。東京大学医学系研究科外科学専攻耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学、東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頚部外科の山岨達也教授らの研究グループは、テキサス大学医学部ガルベストン校の研究グループとの共同研究で、SARS-CoV-2ウイルス量に関わらず、感染が成立すると感染後数日で広範囲にわたって嗅上皮が脱落することを明らかにしました。また、大部分の嗅上皮は感染後21日で正常厚になることも見出しました。本研究の成果は、SARS-CoV-2感染による嗅覚障害の病態解明や治療シーズ開発を加速させると期待されます。
本研究成果は、2021年2月1日に「ACS chemical neuroscience」(オンライン版)にて発表されました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/604377/01_202102021436.pdf
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