東大、セラミックス粒界移動のメカニズムを原子レベルで解明
発表日:2021年01月12日
セラミックス粒界移動のメカニズムを原子レベルで解明
~粒界構造制御による新しい材料設計指針へ~
1.発表者
幾原 雄一(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 教授)
柴田 直哉(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 教授)
石川 亮(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 特任准教授)
馮 斌(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 特任准教授)
魏 家科(東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構 客員研究員)
2.発表のポイント
◆原子分解能を有する最先端走査透過型電子顕微鏡(STEM)(注1)と電子ビーム照射(注2)を組み合わせ、セラミックスにおける粒界移動の素過程を原子レベルで初めて明らかにしました。
◆粒界移動(注3)が粒界における原子構造多面体の逐次変化により移動するという新しいメカニズムにより進行することが分かりました。
◆今回提案の電子ビーム照射による粒界移動の原子レベル観察法は、さまざまな材料系への応用が可能であり、粒界制御に立脚した新規高機能セラミックスの創成に向けた展開が期待されます。
3.発表概要
東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の幾原雄一教授、柴田直哉教授、石川亮特任准教授、馮斌特任准教授および魏家科客員研究員のグループは、原子分解能を有する最先端の走査透過型電子顕微鏡(STEM)(注1)を用い、電子ビーム照射(注2)により、粒界移動(注3)を促進し、粒界近傍の原子がダイナミックに動く様子を原子レベルで初めて明らかにしました。α-Al2O3(アルミナ)に代表されるセラミックスは、一般に焼結により作製されますが、焼結過程は結晶粒子が接合するとともに、粒界(結晶粒子が接合した箇所)の移動により粒径が大きくなります。セラミックスの粒径や粒界構造は材料強度や機能特性と密接に関係していますが、これまでどのような素過程で粒界が移動するのかが分かっていませんでした。本研究では電子ビーム照射とSTEMを組み合わせた手法により、粒界がエネルギーの高くなった結晶粒子の方向へ移動することを見出し、粒界移動過程を直接観察することに成功しました。粒界移動の過程では、粒界が周囲の原子から構成される多面体(構造ユニットと呼ぶ)の逐次変化により移動するメカニズムを初めて明らかにしました。粒界移動の原子レベルでのメカニズム解明されたことにより、粒界を制御した高性能セラミックス材料の創成が期待できます。
本研究成果は、日本時間1月12日(火)午前1時(英国時間:11日(月)午後4時)に英国科学誌「Nature Materials」で公開されました。
本研究は名古屋大学の松永克志教授のグループとの共同研究による成果であり、主に科学研究費補助金である特別推進研究「原子・イオンダイナミックスの超高分解能直接観察に基づく新材料創成」(研究課題番号 17H06094)の助成を受けて実施されました。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/602972/01_202101121521.pdf
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