東大・阪大・産総研など、高次トポロジカル絶縁体を実証
発表日:2021年01月05日
原子層の積み木細工によるトポロジカル物質設計
~世界初となる高次トポロジカル絶縁体の実証~
1.発表者:
野口 亮(東京大学物性研究所 附属極限コヒーレント光科学研究センター博士課程3年)
黒田 健太(東京大学物性研究所 附属極限コヒーレント光科学研究センター 助教)
平山 元昭(東京大学大学院工学系研究科 附属量子相エレクトロニクス研究センター 特任准教授/理化学研究所 創発物性科学研究センター 統合物性科学研究プログラム トポロジカル材料設計研究ユニット ユニットリーダー)
越智 正之(大阪大学大学院理学研究科物理学専攻 助教)
白澤 徹郎(産業技術総合研究所 物質計測標準研究部門 主任研究員)
有田 亮太郎(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授/理化学研究所創発物性科学研究センター 計算物質科学研究チーム チームリーダー)
笹川 崇男(東京工業大学科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 准教授)
近藤 猛(東京大学物性研究所 附属極限コヒーレント光科学研究センター 准教授/トランススケール量子科学国際連携研究機構 准教授)
2.発表のポイント:
◆原子層の積み方の違いでさまざまなトポロジカル相(注1)を実現できることを示した。
◆その積み方を上手く選んでスピン流の通り道を変えられる「高次トポロジカル絶縁体」を世界で初めて実証した。
◆結晶の稜線(ヒンジ)に無散逸となる理想的な一次元スピン流(注2)が流れるため、量子計算デバイスへの応用が期待される。
3.発表概要:
東京大学物性研究所の野口亮大学院生、黒田健太助教、近藤猛准教授、および東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授らの研究グループは、産業技術総合研究所物質計測標準研究部門ナノ材料構造分析研究グループの白澤徹郎主任研究員、東京大学大学院工学系研究科の有田亮太郎教授(理化学研究所創発物性科学研究センター チームリーダー兼任)、東京大学大学院工学系研究科の平山元昭特任准教授(理化学研究所創発物性科学研究センター ユニットリーダー兼任)、大阪大学大学院理学研究科の越智正之助教らの研究グループと共同で、擬一次元積層物質(注3)における高次トポロジカル絶縁体の実現を、ビスマス臭化物 Bi4Br4(Bi:ビスマス、Br:臭素)を用いた実験から明らかにしました。
高次トポロジカル絶縁体は、近年その存在が理論的に予想された新しい量子相です。これまで三次元結晶での実現は確認されておらず、実験によるその検証が待ち望まれていました。今回、本共同研究グループは、その実現に向け、トポロジカル原子層を自在に組み換えられる擬一次元ビスマスハライド Bi4X4(X:ヨウ素(I)または臭素(Br))に着目し、その積層の取り方によってさまざまなトポロジカル量子相を実現できる物質設計指針を提案しました(図1)。その中でも特徴的な積み木構造を有するBi4Br4に対して、角度分解光電子分光法(注4)を用いた電子状態の直接観測を行った結果、この物質が世界初となる高次トポロジカル絶縁体であることを実証しました(図2)。高次トポロジカル絶縁体では、結晶の特定の稜線(ヒンジ)に沿って、無散逸となる理想的な一次元スピン流が安定して流れるため、本研究によって、高次トポロジカル絶縁体を利用した省電力スピン流デバイスや量子計算デバイスへの応用の道が拓かれました。
本成果は、英国科学誌「Nature Materials」に2021年1月4日(英国時間)にオンライン掲載される予定です。
※以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/602601/01_202101041425.pdf