TANAKAホールディングス、CVD・ALD用プリカーサー「TRuST」を開発
発表日:2020年9月28日

液体ルテニウムプリカーサーで世界最高水準の蒸気圧値を実現
CVD・ALD用プリカーサー「TRuST」を開発
~優れた段差被膜性と成膜速度の向上で、半導体の高性能化に貢献~
TANAKAホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長執行役員:田中 浩一朗)は、田中貴金属グループの製造事業を展開する田中貴金属工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長執行役員:田中 浩一朗)が、これまでの液体ルテニウム(元素記号 Ru)プリカーサー(※1)に比べて蒸気圧を100倍以上に高めたCVD(※2)・ALD(※3)用プリカーサー「TRuST(トラスト)」を開発したことを発表します。この実験値は、当社内評価において、常温下における世界最高の蒸気圧値となります。
本開発にあたっては、プリカーサーの設計および合成を田中貴金属工業が、その成膜特性の最適化のための研究を韓国の嶺南大学校工科大学新素材工学科のSOO-HYUN,KIM(キム・スヒョン)教授が担当しました。
本プリカーサーにより、スマートフォンおよびPC用や、今後さらなる需要が見込まれるデータセンターで使用される半導体の高性能化・省電力化に貢献します。
*参考画像・グラフ資料は添付の関連資料を参照
プリカーサーとは、CVD(化学気相成長法)やALD(原子層堆積法)などの方法で、基板上へ金属薄膜、金属配線を形成する際に用いる化合物のことを指します。CVD・ALDプロセスは、段差被覆性に優れ様々な種類の下地基板上に成膜が可能で、半導体の微細化に伴い、構造の複雑化・細線化が進む中で、極めて有用な成膜方法です。
当社は、長年、ルテニウムをはじめとする各種貴金属プリカーサーの開発に取り組んできており、この度、コンピュータシミュレーション等を用いて分子構造の小型化・最適化を行い、プリカーサーとして重要な特性である液体、かつ蒸気圧が高く、成膜に適した熱的安定性を持つ、貴金属化合物の開発に成功しました。その結果、これまでの液体ルテニウムプリカーサーに比べ、蒸気圧を100倍以上と世界最高水準値にまで高めています。プリカーサーの蒸気圧が高いほど、また、プリカーサーの分子構造が小さいほど、成膜室内のプリカーサー濃度を高めることや、基板表面へのプリカーサー分子の吸着密度を高めることが可能となるため、既存のプリカーサーと比べて、優れた段差被覆性と、成膜速度の向上を実現することができました。
さらに、嶺南大学校の研究結果によると、ALD成膜した際の成膜速度は、1サイクルあたり約1.7Åで、液体ルテニウムプリカーサーのALD成膜としては、世界最高水準の成膜速度を示しました。
比抵抗も成膜後に約13μΩ・cmという数値で、バルクのルテニウム金属の値(7.6μΩ・cm)に近い結果が得られています。
ルテニウムのバルクを蒸着に用いる場合は、3000℃付近と高温になりますが、プリカーサーという有機金属化合物の形にすると、真空下で室温~200℃程度の低温でも気化することが可能となります。これらにより、段差被覆性に優れ、高品質なルテニウム膜を、高い生産性で成膜することの実現が期待できます。これらの特性を全て同時に満たすことは技術的に難しく、その実現が従来の課題となっていましたが、この度の「TRuST」の開発で、実現可能となりました。
本製品のサンプル出荷については、2020年10月に開始する予定です。
*以下は添付リリースを参照
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参考画像・グラフ資料
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0540863_01.JPG
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