東大と産総研、高性能CMOSカメラによる新たな変調イメージング技術を開発
発表日:2020年8月19日
CMOSカメラによる電気複屈折イメージング
―透明光学材料の強誘電ドメインを可視化する―
1.発表者:
上村 洋平(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程3年生)
松岡 悟志(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教)
荒井 俊人(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 講師)
長谷川 達生(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授)
2.発表のポイント:
◆透明な強誘電体中の分極ドメインを、CMOSカメラを用いた高速・一括イメージングにより可視化
◆電界印加により生じる僅かな屈折率変化を、偏光位相差をもとに超高感度に2次元マッピング
◆透明光学材料への適用を可能にする変調イメージング技術の新たなラインナップ
3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程3年生の上村 洋平 大学院生、松岡 悟志 助教、荒井 俊人 講師、長谷川 達生 教授と国立研究開発法人 産業技術総合研究所の共同研究グループは、高性能CMOSカメラ(注1)を用いて、透明物質中で自発分極が揃った強誘電ドメイン(注2)の分布の様子を可視化できる、新たな変調イメージング技術を開発しました。
露光した光の像を瞬時に電気信号に変換する半導体デバイスであるCMOSカメラ(イメージセンサ)は、近年著しい進化と普及が進んでおり、現在、その優れた機能をさらに活用する手法の開発が求められています。なかでも「変調イメージング(注3)」は、撮像対象に(電界などの)外場を加えたときに像に生じるごく僅かな変化を、超高感度な一括計測により捉えることで、通常の光学像の撮影ではまったく識別し得ない像を浮かび上がらせることが可能な技術です。ただ従来法は、撮像する対象の可視光域の吸収が外場によって変化を示すものに限られていました。本研究では、電場によって生じる屈折率のごく僅かな変化を、電気複屈折効果(ポッケルス効果)(注4)にもとづく透過光の偏光位相差を通して捉えることにより、透明な光学材料にも適用できる技術を開発しました。本手法を用いて、実際に透明な強誘電体(注5)の一種である水素結合型有機強誘電体(注6)薄膜内の強誘電ドメインの可視化に成功しました。
本研究成果は、米国科学誌Physical Review Appliedに2020年8月21日(米国東部時間)掲載されます。本研究は、JST戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR18J2)、JSPS科研費基盤研究 B(19H02587)、JSPS科研費基盤研究 B(19H02579)、JSPS科研費特別研究員奨励費(18J22030)による支援を受けて行われました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース