東大、日本伝統音楽「邦楽」の演奏家の脳内処理機構を解明
発表日:2020年7月15日
邦楽家の脳:日本伝統音楽「雅楽」を聴くことの意義を神経生理学的に探る
1.発表者:
大黒 達也(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)特任助教)
湯本 真人(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻病態診断医学 講師(研究当時))
2.発表のポイント:
◆世界で初めて日本伝統音楽「邦楽」の演奏家の脳内処理機構を明らかにした。
◆教育経験や音楽文化によって脳の発達の仕方も変化することが示唆された。
◆伝統音楽の教育により、一般的な音楽教育では発達しないような脳機能が発達する可能性がある。多様性を受け入れ、様々な文化を享受できる社会の設計が重要である。
3.発表概要:
近年、様々な研究機関によって音楽と脳の関係性が明らかになってきている。特に、特別な音楽教育を受けてきたような音楽家は脳の聴覚機能が発達し、それに伴って言語聴覚機能も向上することが多くの研究で報告されている。しかし、これまで明らかにされてきたことの殆どが西洋音楽に関わるものであり、日本の伝統音楽(雅楽等)がヒトの脳にどのような効果をもたらすのかに関してはわからないことが多い。東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)の大黒達也特任助教と同大学医学系研究科の湯本真人講師(現所属:群馬パース大学附属研究所先端医療科学研究センター 教授)は、邦楽家、西洋音楽家、非音楽家各10名を対象に、拍(ビート)有り、拍無しのリズム音列聴取時の聴覚脳磁場応答(注1)を計測した。その結果、非音楽家と音楽家間だけでなく、西洋音楽家と邦楽家間においても、リズムの聴覚機能に違いが現れた。邦楽は、普段我々が頻繁に耳にするようなポップスやクラシック音楽(西洋音楽)に比べて、拍が数学的に不規則であることが知られている。このことから、普段我々が耳にしづらい伝統音楽の教育により、一般的な音楽教育だけでは発達しないような脳機能が発達する可能性がある。現在、科学や社会の発展につれて、古来から継承されてきたような文化が徐々に衰退してきている。しかし、本研究の結果を受けて我々の脳機能を高め、本来持っているような個性を伸ばしていくためには、多様性を受け入れ、様々な文化を享受できる社会の設計が重要と考えられる。
※以下は添付リリースを参照
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