東大と産総研、高精細にパターニングされた電極をさまざまな表面に取り付けられる手法を開発
発表日:2020年3月13日
高精細にパターニングされた電極をさまざまな表面に取り付けられる手法を開発
-低コスト・大面積な有機エレクトロニクスの鍵-
1.発表者:
牧田 龍幸(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 博士課程2年生)
渡邉 峻一郎(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 特任准教授/産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 客員研究員 兼務)
竹谷 純一(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 教授/マテリアルイノベーション研究センター(MIRC)特任教授 兼務/産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 客員研究員 兼務/物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)MANA主任研究者(クロスアポイントメント))
2.発表のポイント:
◆電子素子を動作させるためには、電圧や電流を入出力する電極を半導体に取り付けますが、電極形成の際に半導体が受けるダメージや電極と半導体の接触不良などがないよう常に考慮する必要があります。
◆今回、高精細にパターニングされた電極を基板から引き剥がし、これを有機半導体の上に移し取る手法を開発しました。これにより、わずか1分子層の有機半導体であっても半導体本来の機能を引き出せることを実証しました。
◆安価で汎用性が高く、環境負荷の小さい材料を使用しており、大面積化が容易で、しかもさまざまな表面形状へ適用できることから、ソフトエレクトロニクスデバイスの社会実装だけでなく、バイオエレクトロニクス分野への貢献が期待されます。
3.発表概要:
東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(注1)、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは、洗濯のりにヒントを得て、高精細にパターニングされた電極を有機半導体に取り付ける手法を開発しました。
さまざまな機能性を有する電子素子を駆動させるためには、電圧や電流を入出力するための電極が必要不可欠です。電極は通常金属で、高真空下で大きなエネルギーを用いて成膜されることが多く、電極の設置面へのダメージを抑え、接着力など下地との相性を最適化することも重要な課題でした。
本研究グループは、洗濯のりの成分であるポリビニルアルコールが乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶けることを利用し、基板上で高精細にパターニングされた電極をポリビニルアルコールなどとともに電極フィルムとして引き剥がし、半導体上に移し取る手法を開発しました。さらに、たった1分子層(厚さ4ナノメートル)からなる有機半導体に金属電極を取り付け、半導体の機能を十分利用できることを実証しました。取り付け先の制約は極めて少なく、曲面や生体などへの応用も期待できます。今回の成果により、さまざまな積層デバイスへの応用が可能となり、将来の産業応用における低コスト・フレキシブルエレクトロニクス用のプロセスとしての利用が見込まれます。
本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」2020年3月13日版に掲載されます。本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」(研究者代表者:竹谷 純一)の一環として行われました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース