東北大、ゲノム編集を用いた革新的な遺伝子治療による視覚再建に成功
発表日:2020年1月24日
ゲノム編集を用いた革新的な遺伝子治療による視覚再建
- 遺伝子変異を正常化する遺伝子治療の実現へ -
【発表のポイント】
・病気の原因となる遺伝子変異を正常配列に置換するための、ゲノム編集(注1)による遺伝子治療(注2)で用いるアデノ随伴ウイルス(AAV)(注3)の単一化に成功した。
・この技術を用いることにより、従来の方法の約2~5倍の効率でゲノム編集を実現し、ゲノム編集が起こりにくく、これまで治療例がなかった成体マウス神経細胞の遺伝子変異の正常化が可能になった。
・この技術を用いた遺伝子治療の結果、全盲の網膜変性マウスにおいて正常の6割程度の視力を回復し、同治療の実用性を実証した。
【研究概要】
東北大学大学院医学系研究科の視覚先端医療学の西口康二(にしぐち こうじ)准教授と眼科学分野の中澤徹(なかざわ とおる)教授らのグループは、新しい遺伝子治療の方法を開発し、全盲の網膜変性マウスにおいて正常の6割程度の視力回復を実現しました。
現在、ゲノム編集を用いた遺伝子治療として、主に病気の原因となる遺伝子を「破壊」することにより病気を治療する方法での臨床応用の研究が進んでいます。それに対して、病気の原因となる遺伝子を「正常化」するゲノム編集を用いた遺伝子治療は技術的に難易度が高く、臨床への実用化が難しい状況でした。しかし、遺伝子を「正常化」する遺伝子治療は、実用化されると極めて汎用性が高い「究極」の遺伝子治療です。本研究は、遺伝子変異の「正常化」を可能にするゲノム編集を用いた遺伝子治療(変異置換ゲノム編集治療)の単一ウイルス化に成功しました。この治療法を網膜変性疾患のマウスに応用し、実用化可能なレベルの治療効果を実証しました。本研究の成果により、これまで治療が不可能であった多くの遺伝性疾患が治療できる可能性があります。
本研究成果は、2020年1月24日 午前10時(英国時間、日本時間 1月24日 午後7時)Nature Communications誌(電子版)に掲載されます。
※以下は添付リリースを参照
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