東大・京大など、核融合エネルギーの実現に必要な水素プラズマの超高温領域を瞬時に拡大することに成功
発表日:2020年1月8日
核融合エネルギーの実現に必要な水素プラズマの超高温領域を瞬時に拡大することに成功
―ゼロエミッションエネルギー実現に向けて前進―
1.発表者:
釼持 尚輝(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻 助教)
南 貴司(京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)
水内 亨(研究当時:京都大学エネルギー理工学研究所 教授)
高橋 千尋(京都大学エネルギー理工学研究所 協力研究員)
Gavin McCabe Weir(マックス・プランク物理学研究所 研究員)
西岡 賢二(研究当時:名古屋大学大学院理学研究科 特任助教)
小林 進二(京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)
中村 祐司(京都大学大学院エネルギー科学研究科 教授)
岡田 浩之(京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)
門 信一郎(京都大学エネルギー理工学研究所 准教授)
山本 聡(研究当時:京都大学エネルギー理工学研究所 助教)
大島 慎介(京都大学エネルギー理工学研究所 助教)
木島 滋(京都大学エネルギー理工学研究所 協力研究員)
大谷 芳明(研究当時:京都大学大学院エネルギー科学研究科 大学院生)
長崎 百伸(京都大学エネルギー理工学研究所 教授)
2.発表のポイント:
◆超高温プラズマを閉じ込める断熱層の位置を自在に制御できる方法を発見しました。
◆水素プラズマの中心部分の断熱層で閉じ込められた約2000万度の狭い超高温領域を、1万分の1秒で瞬時に拡大し、プラズマ全体に広げることに世界で初めて成功しました。
◆次世代のクリーンエネルギーとして注目される核融合エネルギーの実現に必要な超高温プラズマの制御手法として期待されます。
3.発表概要:
東京大学大学院新領域創成科学研究科の釼持尚輝助教、京都大学エネルギー理工学研究所の南貴司准教授、長崎百伸教授らのグループは、超高温プラズマを閉じ込める断熱層の位置を自在に制御する手法を発見しました(図1)。
核融合エネルギーは太陽と同じ原理を用いて、海水中に豊富に存在する水素からエネルギーを生成する手法です。核融合エネルギーの実現には超高温の水素プラズマを生成する必要があります。プラズマの中にも温度を閉じ込めておく「魔法瓶」のような断熱層を作ることができますが、これまでの研究では中心に近いところに断熱層があったため高温の領域が狭いという問題がありました。
今回研究グループは、京都大学にあるヘリオトロンJ装置(注1、図2)を用いて、水素プラズマの中心部分の断熱層で閉じ込められた約2000万度の狭い超高温領域を、1万分の1秒で瞬時に拡大させ、プラズマ全体に広げることに世界で初めて成功しました。
今回発見した方法は、現在フランスで建設中の核融合実験炉ITER(注2)や将来の核融合発電炉において重要な運転制御の手法として期待されます。
本研究成果は、2020年1月8日に英国ネイチャー・リサーチが提供するオープンアクセスのオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載予定です。
※以下は添付リリースを参照
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