阪大・東大・筑波大、ガラス状高分子における分子振動の正体を解明
発表日:2019年12月20日

プラスチックの硬さに潜むシンプルな性質を世界で初めて明らかに。

―高分子ガラスにおける分子振動の正体とは?―
【研究成果のポイント】
◆高分子鎖の集合体(高分子ガラス)をコンピュータシミュレーションにより再現し、高分子鎖の分子振動のメカニズムを分子レベルから理解
◆多くのガラス物質において観測されるボゾンピークと呼ばれる振動励起が、高分子ガラスでも観測され、その周波数が弾性的性質にのみに依存するという極めて単純な性質を発見
◆今回の研究成果から、テラヘルツ波を用いて高分子の力学特性を非破壊検査する基盤理論の深化へと繋がることが期待
■概要
大阪大学大学院基礎工学研究科大学院生の友重 直也さん(博士前期課程2年)、金 鋼准教授、松林 伸幸教授の研究グループは、東京大学の水野 英如助教、筑波大学の森 龍也助教との共同研究により、ガラス(※1)状高分子における分子振動(※2)の正体を、コンピュータシミュレーションを用いた理論研究により明らかにしました。
高分子の性質を正しく理解することは、様々な用途に用いられるプラスチック製品を開発する上で本質的なことです。しかしながら、たくさんの高分子の鎖が集まるとなぜ窓ガラスと同じように硬くなるのか、その性質の分子レベルからの解明は今までありませんでした。
今回共同研究グループは、高分子鎖の集合体がガラスになる過程を分子動力学法と呼ばれるコンピュータシミュレーションにより再現し、その性質を詳細に解析しました(図1)。ずり変形(※3)と呼ばれる歪みを加えて硬さを計測したところ、高分子鎖1本が硬くなるにつれて集合体全体も硬くなりました。しかし、系全体の硬さはガラス特有の非アフィン変形(※4)の効果に起因して、鎖1本の硬さに対して相対的に極めて柔らかくなることを明らかにしました。また、ボゾンピーク(※5)と呼ばれるほとんどのガラス物質で見られる振動励起が、高分子ガラスでもテラヘルツ波(※6)領域で観測されることがわかり、その周波数がずり変形に対する硬さの指標である剪断弾性率のみによって説明される関係式を得ることに、世界で初めて成功しました(図2)。このことはテラヘルツ波を用いてプラスチックのずり変形のしにくさなどの力学特性を非破壊・非接触に検査できることを意味し、応用上も重要な知見となります。
*図1・2は添付の関連資料を参照
本研究成果は、英国シュプリンガー・ネイチャーが出版する総合科学誌「Scientific Reports」に、2019年12月20日(金)午後7時(日本時間)にオンラインで公開されます。
*以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
図1
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0525727_01.jpg
図2
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0525727_02.jpg
添付リリース