阪大、酸性でも光刺激でon・offできる緑色蛍光タンパク質 rsGamillusを開発
発表日:2019年8月20日

酸性でも光刺激でon・offできる緑色蛍光タンパク質 rsGamillus

―生体内の酸性環境を高解像度で観察する新技術―
【研究成果のポイント】
◆生物試料を超解像観察するための光スイッチング蛍光タンパク質、rsGamillusを開発した。
◆rsGamillusは光刺激により、蛍光のon・off制御を行うことができる。
◆従来の可逆的光スイッチ蛍光タンパク質は全て、pH5-6以下の酸性環境で蛍光を失うという課題があったが、rsGamillusはpH4.5-9.0の細胞環境pHで、安定した強度の蛍光を放つ。
◆酸性環境中の未知の生命現象を発見する基盤技術となり、医学・創薬研究への貢献も期待される。
■概要
大阪大学産業科学研究所の永井健治教授らの研究グループは、pH4.5-9.0の細胞環境で安定して蛍光(※1)する、耐酸性の光スイッチ型緑色蛍光タンパク質(※2)"rsGamillus"の開発に成功しました。特殊な顕微鏡法と組み合わせることで、光の回折限界(※3)を超えた分解能で、生きた生物試料の高解像度画像を撮影できるようになります。
研究グループは昨年、日本産ハナガサクラゲの光る触手から新規の蛍光タンパク質を単離改変することによりpH4.5-9.0の細胞環境で安定して蛍光する耐酸性の緑色蛍光タンパク質"Gamillus"を開発しました。
今回、吸収スペクトル測定とX線結晶解析(※4)により、酸性環境下において、Gamillusの蛍光・非蛍光状態が光刺激により可逆的に切り替わること(光スイッチ)、そのメカニズムが蛍光発色団(※5)のtrans-cis異性化ならびにフェノール水酸基のプロトン化/脱プロトン化であることを見出しました(図1)。このメカニズムを基にした分子設計、遺伝子変異導入により、光スイッチのコントラストを向上させた変異体rsGamillusを開発しました。
現在までに報告されている可逆的光スイッチ蛍光タンパク質が全てpH5-6以下の酸性環境で蛍光を失うのに対して、rsGamillusは酸性環境でも安定した蛍光を放ち、細胞内のほぼ全てのpH環境で使用可能であることが分かりました(図2左)。人工的に模した細胞酸性環境中(pH4.5)で、1分子蛍光の輝点重心位置の計測に基づく超解像顕微鏡観察に応用できることを証明しました(図2右)。酸性細胞小器官は、2016年のノーベル医学・生理学賞受賞者の大隅良典博士が発見したオートファジー等、多くの生命機能に密接に関わっています。しかし、既存の光スイッチ型の蛍光タンパク質は、低pHで蛍光しないため、酸性細胞小器官内での使用が限られていました。
rsGamillusは、酸性環境中の未知の生命現象を発見するための基盤技術となり、医学・創薬研究にも大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、2019年8月15日(木)に「Cell Chemical Biology」(オンライン)に掲載されました。
*図1・2は添付の関連資料を参照
*以下は添付リリースを参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
図1
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0517011_01.JPG
図2
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0517011_02.JPG
添付リリース