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東京農工大など、化学反応前後の物性値では予測できない高分子溶液の流動を発見

2019/6/6 11:00
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発表日:2019年6月6日

化学反応前後の物性値では予測できない高分子溶液の流動を発見

~分子を診る反応系流体力学の創出に向けて~

国立大学法人東京農工大学大学院工学府応用化学専攻(発見当時)の植木敏允さん、多川慧さん、同大学院工学研究院応用化学部門(生物システム応用科学府生物機能システム科学専攻)の長津雄一郎准教授、日本大学医学部一般教育学系化学分野の飯島淳助教は、化学反応前後の流体の物性値だけでは予測できない、高分子溶液の流動があることを発見しました。

今回の発見では、化学反応により液体の粘度がわずかに減少するにもかかわらず、一時的に粘弾性が著しく増加していました。この反応メカニズムの解明のために、超低濃度、超高分子量の高分子水溶液における赤外分光測定に挑み、これを ATR-FTIR 法(※1)により成功させました。一時的に電荷の高い分子が主成分となることで、分子間の電気的な架橋によって見かけの分子量が増加し、粘弾性が増加していたのです。本研究は、マクロな流動の理解にミクロな分子構造変化の解明が必要となる高分子溶液反応流の存在を実証したことになります。本成果は、分子を診る反応系流体力学という新しい学問分野の創出につながり、新たな反応器設計(※2)の枠組みの提案や新たなレオロジーコントロール(※3)法の創出といった工業上の応用が期待されます。

本研究成果は、米国化学会が発行する Journal of Physical Chemistry B(電子版 5 月 30 日付)に掲載されました。

・掲載場所: https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.jpcb.9b02057

また本論文の成果が掲載誌の Supplementary cover に選ばれました。

・論文名:Unpredictable Dynamics of Polymeric Reacting Flow by Comparison between Pre- and Post-Reaction Fluid

・Properties:Hydrodynamics Involving Molecular Diagnosis via ATR‐FTIR Spectroscopy

・著者:Toshimasa Ueki,Jun Iijima,Satoshi Tagawa,and Yuichiro Nagatsu

現状:化学反応を伴う気体や液体の流動(反応流と呼ばれる)は、工業分野、環境中、生体内などで観察され、生活の至るところに存在する現象です。気体の反応流は燃焼に代表され、エンジンの開発等とも関連して、これまでに盛んに研究されています。一方、液体の反応流は、相対的に研究例が少なく、特に高分子溶液の反応流についての研究は非常に少数です。気体、液体によらず、化学反応によって流体の物性が変化することで、流動も変化します。そのため、これまでは反応前後の流体の物性値を比較することで、化学反応が流体力学に及ぼす影響を予測できることが常識とされていました。例えば、反応前後で粘度が減少するのであれば、流動中の粘度も減少すると考えられ、逆に反応前後で物性値の変化がなければ、化学反応は流体力学に影響を及ぼさないと考えることが常識でした。

研究成果:高分子溶液反応流研究の体系化を目指し、高分子水溶液と金属イオン水溶液の撹拌混合反応過程を系統的に調べていた中で、部分的に加水分解されたポリアクリルアミド水溶液(分子量 5-6 百万、濃度 1 重量%、pH=9)90 ml をビーカーに入れて撹拌翼で撹拌(150 回転/分)し、硝酸鉄(III)水溶液 10 ml(濃度 0.01 モル/リットル)を注ぐと、粘弾性の高い溶液が撹拌棒に巻きつくワイゼンベルグ効果が出現しますが、やがて消失することを偶然、発見しました(図2)。また硝酸鉄水溶液添加前後で溶液の粘性はわずかに減少することが分かりました。このメカニズムを明らかにするために、撹拌トルク(撹拌翼にかかるねじりの強さ:液体の粘弾性が高いほど大きな力がかかる)と溶液の pH を同時に測定しました(図3(a))。その結果、ワイゼンベルグ効果の出現・消失に対応して撹拌トルクが一時的に増加しました。また pH は硝酸鉄(III)水溶液添加のすぐ後に、pH=3.4 に急激に減少しました(図3(b))。

さらに鉄アクア錯体の加水分解平衡式から、硝酸鉄(III)水溶液添加直後は[FeIII(H2O)6]3+と[FeIII(H2O)5(OH)]2+、添加後は[FeIII(H2O)5(OH)]2+と[FeIII(H2O)4(OH)2]+の濃度が、他の鉄アクア錯体と比べて大きくなることを示しました。これらより、図4 に示す反応モデルを提案し(図4)、このモデルが妥当であることを ATR-FTIR 分光計測により示しました(図5)。

*以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0511443_01.pdf

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