プレスリリース

東大、膀胱癌に対する新しい免疫療法を開発

2019/6/3 16:05
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発表日:2019年6月3日

膀胱癌に対する新しい免疫療法の開発

~制御性T細胞の制御~

1.発表者:

前田 真吾(東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 助教)

村上 康平(研究当時:東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 博士課程)

井上 亜希子(研究当時:東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 博士課程)

米澤 智洋(東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 准教授)

松木 直章(研究当時:東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 教授)

2.発表のポイント:

◆膀胱癌を発症したイヌにおいて、制御性T細胞(Treg)が腫瘍組織に浸潤するメカニズムを明らかにし、その阻害剤を用いたTreg浸潤抑制が膀胱癌の有効な治療標的となることを証明した。

◆ヒトの膀胱癌患者においても、同様のメカニズムによってTregの腫瘍内浸潤が引き起こされている可能性を示した。

◆本研究成果は、膀胱癌に対する新しい治療法を提示するとともに、イヌの臨床症例が自然発症腫瘍モデルとして有用であることを示唆するものである。

3.発表概要:

制御性T細胞(Treg:(注1))は炎症の収束や免疫寛容に関わる重要な免疫抑制細胞であるが、腫瘍においては抗腫瘍免疫を抑制して患者の予後を悪化させることが知られている。Tregの腫瘍内浸潤(注2)を阻害することで抗腫瘍免疫を活性化する治療法がマウスモデルで提唱され、ヒトでも症例報告レベルで有効性が確認されているが、膀胱癌における有効性の情報は皆無であった。

東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、イヌの膀胱癌症例を用いて、(1)腫瘍組織へのTreg浸潤が予後を悪化させること、(2)Tregの腫瘍内浸潤にはケモカイン(注3)のひとつであるCCL17(注4)とその受容体であるCCR4が関与していること、(3)CCR4阻害剤の投与が膀胱癌に対して有効であること、(4)尿中CCL17濃度がCCR4阻害剤の治療効果を予測するバイオマーカーとなること、(5)ヒトの膀胱癌患者においても同様のメカニズムでTreg浸潤が引き起こされている可能性があることを明らかにした。

本成果により、CCR4を標的とした「制御性T細胞の制御」が膀胱癌に対する新しい治療法となる可能性が示された。また本研究成果は、イヌの臨床症例が自然発症腫瘍モデルとして有用であることを示唆する。

4.発表内容:

【研究の背景】

医学領域において膀胱癌は一般的な腫瘍であり、世界中で毎年約43万人が新たに発症し、17万人の死因となると推定されている。膀胱癌は、粘膜の表層に発生する低グレードタイプと筋層に浸潤する高グレードタイプの2つのタイプに分類される。高グレードタイプの筋層浸潤性膀胱癌は高率に遠隔転移するため、その予後は非常に悪い。標準治療として白金製剤による抗がん剤治療が行われているが、その全生存期間は約1年、5年生存率はわずか5%と報告されている。そのため、筋層浸潤性の膀胱癌に対する新しい治療法の開発が求められているが、筋層浸潤や転移能といった悪性の性質を持つ膀胱癌マウスモデルは少ない。そのため、他の固形癌に比べて膀胱癌の研究は遅れているのが現状である。

東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、膀胱癌を自然発症したイヌの臨床症例を用いて解析を行った。伴侶動物であるイヌは実験動物のマウスと異なり、遺伝的・環境的・免疫学的に多様性を有している。またイヌとヒトの膀胱癌は、臨床症状や病理組織像、進行・転移様式、抗がん剤に対する治療反応性、遺伝子発現プロファイルといったさまざまな点で類似することが報告されている。さらにイヌの膀胱癌の約90%が筋層浸潤性の高グレードタイプである。以上の特徴から、イヌの膀胱癌はヒトの筋層浸潤性膀胱癌の有用な動物モデルとなる可能性がある。

本研究では、イヌの膀胱癌症例を用いてTregの腫瘍内浸潤メカニズムを明らかにし、その分子メカニズムに基づいた治療法の有効性を評価した。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0511133_01.pdf

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