東大と阪大など、柔らかいシート上へ実用スピントロニクス素子を直接形成することに成功
発表日:2019年3月28日
柔らかいシート上へ実用スピントロニクス素子を直接形成することに成功
~スピントロニクス素子のIoT応用展開を大きく拡大~
1.発表者:
・太田 進也(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程2年生)
・小野 真暉(東京大学工学部 物理工学科 4年生)
・松本 啓岐(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 修士課程1年生)
・安藤 陽(株式会社村田製作所新規技術センター シニアプリンシパルリサーチャー)
・関谷 毅(大阪大学産業科学研究所 教授/大阪大学 栄誉教授)
・河野 竜平(東京大学工学部 物理工学科 4年生 ※研究当時)
・井口 照悟(東京大学工学部 物理工学科 4年生 ※研究当時)
・小山 知弘(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教)
・千葉 大地(東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 准教授)
2.発表のポイント:
◆ハードディスクの読み取りヘッドや不揮発性磁気メモリで広く用いられている汎用的なスピントロニクス素子[CoFeB/MgO(コバルト鉄ボロン/酸化マグネシウム)系磁気トンネル接合素子]を、伸縮性のある有機フレキシブルシート上へ直接形成することに世界で初めて成功しました。
◆シートを引っ張ることで素子に応力が加わっていることが確認できましたが、外部磁界に対する素子の抵抗変化率は全く変化せず、素子の破壊も見られないことから、外部応力に対する高い耐性が示されました。また、350 oCもの高温プロセスに耐えうる素子であることが確認できました。
◆柔らかいスピントロニクス素子は、固い基板上に形成されてきた従来の素子に比べ圧倒的にメカニカルデザインの自由度が大きく、ひずみゲージの感度向上や、フレキシブルデバイス周辺へ集積化された省電力な磁気メモリの配備を可能にするなど、IoT社会に適合した新たな応用展開が期待されます。
3.発表概要:
磁気トンネル接合と呼ばれる、2枚の磁性薄膜で絶縁体のナノ薄膜をサンドイッチした構造は、ハードディスクの高感度な磁気読み取りヘッドや不揮発性磁気メモリの記録素子として広く活躍しており、代表的なスピントロニクス素子と言えます。中でも、CoFeBを磁性層に、MgOを絶縁層に用いた接合素子は、市販のデバイスにおいてすでに広く用いられています。しかし、これらの接合素子は硬い半導体素子上に形成され、外部から応力が加わった状況下で使用することは想定していませんでした。
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の太田進也氏、同 小野真暉氏(工学部物理工学科)、同 千葉大地 准教授、株式会社村田製作所の安藤陽氏、大阪大学産業科学研究所の関谷毅 教授らの研究チームは、世の中で広く用いられているCoFeB/MgO系の磁気トンネル接合素子を、柔らかい有機シート上へ直接形成することに世界で初めて成功しました。高い伸縮性と熱耐性を有する同素子は、スピントロニクス素子のメカニカルデザインの自由度を拡大し、フレキシブルデバイス周辺への磁気メモリの配備や、柔らかい磁気センサやひずみゲージの高感度化など、新たな産業応用展開へ直結するものと期待されます。
本成果は、2019年4月2日に、「アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express)」のオンライン版に掲載されます。なお、本研究は株式会社村田製作所の協力を受けて実施されました。
*以下は添付リリースを参照
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添付リリース
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