東大と産総研、ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」を発見
発表日:2019年2月20日
ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」を発見
―高エネルギー密度キャパシタ開発への新たな指針―
1.発表者:
・山田 淳夫(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 教授)
・大久保 將史(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 准教授)
・大谷 実(産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 研究チーム長)
・安藤 康伸(産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 主任研究員)
2.発表のポイント:
◆層状化合物のナノ層間にリチウムイオンと共に閉じ込められた水分子が負の誘電率(注1)を持つことを発見した。
◆水が負の誘電率を持つことで、層状化合物の電気二重層容量(注2)が大幅に増大することを実験・理論の両面から実証した。
◆水分子の負の誘電率を使うことで、電気二重層キャパシタ(EDLC、注3)を高エネルギー密度化する新たな指針を提示した。
3.発表概要:
ナノ空間に閉じ込められて強く束縛された化学種は、普段は観測されることのない異常な物性を示すことが知られています。東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授と大久保將史准教授らのグループは、国立研究開発法人産業技術総合研究所の大谷実研究チーム長、安藤康伸主任研究員との共同研究により、MXene(マキシン、注4)と呼ばれる層状化合物の層間ナノ空間にリチウムイオンとともに閉じ込められた水分子が、「負の誘電率」を持つことを見出しました(図1)。
今回発見された水分子の「負の誘電率」は、従来未開拓であったナノ空間における水分子の異常な物性を明らかにしただけでなく、この「負の誘電率」を利用すると少ないエネルギーでイオンを高密度に蓄えることが可能となるため、高エネルギー密度の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)の開発に繋がる重要な成果です。
本研究成果は、2019 年2 月20 日付の英国学術誌Nature Communications 電子版に掲載されます。本研究成果の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金特別推進研究(No.15H05701)による支援を受けて行われました。
※以下は添付リリースを参照
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