東大・電通大・原子力機構、磁石の中を高速伝播する磁気の壁の運動を電圧制御することに成功-磁気メモリデバイスの高性能化
発表日:2018年12月22日
磁石の中を高速に伝播する"磁気の壁"の運動を電圧で制御することに成功
~磁気メモリデバイスの高性能化に道~
1. 発表者:
・小山 知弘(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 助教)
・仲谷 栄伸(電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 教授)
・家田 淳一(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 研究主幹)
・千葉 大地(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授)
2. 発表のポイント:
◆磁石の中を伝播する"磁気の壁"(磁壁)をより高速で駆動させる技術は磁気メモリの高性能化に不可欠であり、磁石に電圧を加える手法はそれを省エネルギーで実現するものとして期待されています。
◆これまでは秒速1 ミリメートル以下という極めて遅い速度領域でしか主な実証報告がありませんでしたが、本研究ではそれよりはるかに高速な秒速100 メートルを超える速度領域において、磁壁の速度を電圧により変化させることに成功しました。
◆メモリとして実用可能な速度領域における電圧による磁壁速度変化の実証は世界初であり、高速・大容量・高耐久性という特性を兼ね備えた究極のストレージメモリとして期待される「レーストラックメモリ」の実現にも大きく近づく成果です。
3. 発表概要:
高度情報化社会を迎え扱われる情報量が爆発的に増加している現在、コンピュータ中で情報の書き込み・読み出しを行うメモリのさらなる高性能化が要求されています。2008 年に、ワイヤ状に加工した磁石の中でN 極およびS 極(磁極)の向きをデジタル情報として担わせ、それらをシフトさせることで情報の読み出しを行う「レーストラックメモリ」がIBM から提案されました。このメモリは、磁石が本質的に有する磁極の向きを利用するので原理的に劣化が起こらず、さらに機械的動作が必要ないため高い耐久性を有するという、半導体を凌ぐ究極のメモリとして期待されています。情報のシフト速度の高速化は情報処理能力の向上に直結するため、世界中で盛んに研究されている状況です。
東京大学大学院工学系研究科の小山知弘助教、千葉大地准教授、電気通信大学の仲谷栄伸教授、日本原子力研究開発機構の家田淳一研究主幹らの研究チームは、絶縁体を介して磁石に電圧を加える「電界効果」という手法を用いて、秒速100 メートルを超える高速な磁気の壁(磁壁:N 極とS 極の境界)の運動を制御することに世界で初めて成功しました。これまでは秒速1 ミリメートル以下の遅い磁壁移動について主に研究されてきましたが、本研究成果はメモリとして実用可能な速度領域において、電圧を用いた情報シフトの高速化が可能であることを実証した世界で初めての成果であり、レーストラックメモリのさらなる高速化・省エネ化を実現する技術に繋がるものとして期待されます。
本成果は、2018 年12 月21 日(米国東部時間)に、米国オンライン科学雑誌「Science Advances」に掲載されます。なお、本研究は科研費若手研究(A)他の支援を受けて実施されました。
※以下は添付リリースを参照
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