2019年9月16日(月)

プレスリリース

東大、細胞が遺伝子のコピー数を数え安定数を維持する仕組みを解明-細胞の老化・がん化解明に期待

2019/1/4 1:00
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発表日:2019年1月4日

「細胞が遺伝子の数を数えて維持する仕組みを解明」

■発表のポイント:

◆本研究成果は、細胞が遺伝子のコピー数を数え安定数を維持する仕組みを持っていることを初めて明らかにしました。

◆タンパク質合成に多量に必要なリボゾームRNA遺伝子のコピー数を数える因子UAFを発見し、減少したリボゾームRNA遺伝子のコピー数を適正なコピー数に回復する長寿遺伝子SIR2を介した機構を明らかにしました。

◆リボゾームRNA遺伝子を安定に維持する仕組みは、細胞の機能を正常に保つ上で最も基本的なメカニズムの1つであり、今後細胞の老化やがん化の解明につながると期待されます。

■発表概要:

私たちヒトを含めた生物の細胞は、さまざまなタンパク質を合成することで細胞の機能を維持しています。そのためタンパク質合成を担うリボゾーム(注1)を大量に安定供給することは、全ての細胞にとって非常に重要です。それには、同じ遺伝子が多数連なった反復遺伝子であるリボゾームRNA遺伝子が(注2、3)、安定に保持される必要があります。しかし、減少しやすい性質を持った反復遺伝子のコピー数を、細胞がどのように一定に保っているのかは長い間謎でした。

今回、東京大学定量生命科学研究所の飯田哲史助教と小林武彦教授は、長寿遺伝子として知られヒトにも存在するSir2タンパク質の量がリボゾームRNA遺伝子のコピー数に応答して変化する点に着目し、その発現調節機構を詳細に解析しました。その結果、UAFという因子がリボゾームRNA遺伝子のコピー数を数える機能を持っていること、減少したコピー数を適正な数に回復するのにUAFとSir2が機能していることが明らかとなりました。

今回我々は細胞が遺伝子のコピー数を数え調節する仕組みを持っていることを初めて発見しました。特にリボゾームRNA遺伝子のコピー数の変動は、老化やがん化と関係があり、本研究成果は、それらの予防や治療につながる基礎研究となります。

■発表内容:

私たち生物の細胞は、DNA上のさまざまな遺伝子からRNAを合成しその情報を翻訳しタンパク質を合成することで細胞の機能を発揮しています。そのタンパク質合成を支えるのは、タンパク質合成を担う大量のリボゾームです。リボゾームは、70種以上のタンパク質と4種類のリボゾームRNAから構成されますが、多量のリボゾームRNAの供給には、リボゾームRNA遺伝子が多数の連なった反復(リピート)遺伝子として安定に保持される必要があります。しかし、リピート遺伝子は、DNAに起きた損傷(切断など)を修復する際に、別のコピーとの間で組換えが起こりコピーを失いやすい性質を持っており、生物の細胞がどのように種固有のリボゾームRNA遺伝子のコピー数(注4)を保っているのかは長い間謎でした。

リボゾームRNA遺伝子のリピートでは、RNAポリメラーゼIと呼ばれるリボゾームRNA合成専用の強い活性を持ったRNA合成酵素がRNAの合成を行なっています。通常、多数存在するリボゾームRNA遺伝子のうち、約半数からリボゾームRNAを合成し残りの半数は予備として保持されています。もし、リボゾームRNA遺伝子のコピー数が減少してしまった場合でも、RNA合成を行うリボゾームRNA遺伝子の割合や1コピーあたりのRNAポリメラーゼIの密度を上げることで、リボゾームの安定供給を維持します。同時に細胞は、細胞分裂を繰り返すなかで、本来維持するべきコピー数まで、遺伝子増幅機構(注5)を利用してコピー数を徐々に回復します(図1)。そのため、細胞にはリボゾームRNA遺伝子の数を数える仕組みと適正なコピー数まで回復した時に増幅をやめて一定数を維持する機構が存在するのではないかと考えられてきました。

真核生物のモデル生物である出芽酵母は、リボゾームRNA遺伝子が約150コピー連なった繰り返し(リピート)構造を有しています。通常、150コピーのリボゾームRNA遺伝子のリピートは、長寿遺伝子として知られヒトにも存在するSir2タンパク質によって、リピート内の増幅組換え機構が抑えられ一定に保たれています。今回、本研究グループは、SIR2遺伝子の発現がリボゾームRNA遺伝子のコピー数の減少に応じて抑制されていることに着目し、コピー数を感知する仕組みを解析しました。その結果、UAFという因子がリボゾームRNA遺伝子のコピー数を数える役割を持っており、そのコピー数の減少に応じてSir2の量を抑える機能を持っていることを明らかにしました。UAFは、リボゾームRNA遺伝子の転写活性化因子で転写開始領域(プロモーター)に結合して転写を促進する機能が知られていました。

リボゾームRNA遺伝子のコピー数が減少すると、それまで結合していたUAFが、結合相手を失い、余った分がSIR2遺伝子のプロモーター領域に移動することでSir2の発現量を抑えていることが判りました。Sir2の量が減少することで、それまで抑えられていたリボゾームRNA遺伝子の遺伝子増幅機構が"ON"となり、コピー数の回復が促されます。コピー数が十分に回復すると、今度は、UAFがSIR2遺伝子からリボゾームRNA遺伝子に再び移動し、SIR2遺伝子の抑制が解除され、十分な量のSir2が供給されるようになり、それらがリボゾームRNA遺伝子の増幅機構を停止して、コピー数が一定に保たれるようになります(図2)。

本研究成果は、細胞がリボゾームRNA遺伝子のコピーを数え必要数を安定に維持する仕組みを持っていることを示した初めての例であり、細胞の機能を正常に維持する基本メカニズムの1つを解明しました。老化やがん化にともないリボゾームRNA遺伝子のコピー数が変動することが知られており、本研究成果は、将来的にはこれらの予防と治療に繋がる研究と期待されます。

■発表雑誌:

雑誌名:Molecular Cell(2019年1月3日オンライン発行予定)

論文タイトル:RNA polymerase I activators count and adjust ribosomal RNA gene copy number

著者:Tetsushi Iida* and Takehiko Kobayashi*

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0498792_01.pdf

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