理研と東大、ナノスケールの磁気渦構造「メロン」と反渦構造「アンチメロン」の正方格子の直接観察に成功
発表日:2018年12月6日

磁気渦と反渦の正方格子を世界で初めて観察
-さまざまなトポロジカル磁気構造に関する研究を加速-
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター電子状態マイクロスコピー研究チームの于秀珍(ウ・シュウシン)チームリーダー、強相関物質研究グループの田口康二郎グループディレクター、強相関理論研究グループの永長直人グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)と強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(同教授)らの共同研究グループ(※)は、ナノスケール(1~100nm、1nmは10億分の1メートル)の磁気渦構造である「メロン[1]」と反渦構造「アンチメロン[2]」の正方格子の直接観察に世界で初めて成功しました。
本研究成果により、さまざまなトポロジカル[3]磁気構造に関する研究やトポロジー[3]に関連した創発電磁現象[4]の研究が加速されるものと期待できます。
今回、共同研究グループは、室温において「Co8Zn9Mn3(Co:コバルト、Zn:亜鉛、Mn:マンガン)」というらせん磁性体[5]の薄片に微小な外部磁場を加えたところ、磁気渦構造のメロンとその反渦構造であるアンチメロンの正方格子が生成されることをローレンツ電子顕微鏡[6]で観察できました。また、(1)外部磁場を徐々に大きくすると、メロンとアンチメロンは「スキルミオン[7]」に変化し、その構造は正方格子から三角格子に変わること、(2)室温で生成されたメロンとアンチメロンの正方格子はスキルミオンの三角格子よりも温度の影響を受けやすいこと、(3)低温において、安定なスキルミオンの三角格子と異なってメロンとアンチメロンの正方格子は崩壊しやすいことが明らかになりました。
本研究は、国際科学雑誌『Nature』(2019年12月6日号)に掲載されます。
*図は添付の関連資料を参照
※共同研究グループ
・理化学研究所 創発物性科学研究センター
電子状態マイクロスコピー研究チーム
チームリーダー 于 秀珍(ウ・シュウシン)
強相関理論研究グループ
上級研究員 小椎八重 航(こしばえ わたる)
グループディレクター 永長 直人(ながおさ なおと)
(東京大学大学院 工学系研究科 教授)
強相量子構造研究チーム
基礎科学特別研究員 柴田 基洋(しばた きよう)
強相関物質研究グループ
グループディレクター 田口 康二郎(たぐち やすじろう)
強相関物性研究グループ
グループディレクター 十倉 好紀(とくら よしのり)
(東京大学大学院 工学系研究科 教授)
・東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻
准教授 徳永 祐介(とくなが ゆうすけ)
※研究支援
本研究の一部は日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤研究A「反転対称性が破れた電子系における非線形非相反応答の理論(研究代表者:永長直人)」による支援を受けて行われました。
*以下は添付リリースを参照
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図
http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0497318_01.jpg
添付リリース