プレスリリース

東北大、被ばく線量が多くなると血中の抗酸化能が低下する現象を発見

2018/10/1 12:05
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発表日:2018年10月1日

i-STrap法:微量の血液から被ばく線量の推定が可能に

被ばく線量が多いと血中の抗酸化能が低下する

【発表のポイント】

・被ばく線量が多くなると血中の抗酸化能(注1)が低下する現象を発見した。

・わずか100μLの血液から抗酸化能をi-STrap法(注2)により測定することができた。

・放射線事故災害時のトリアージ(注3)において被ばく線量推定ができる可能性が示された。

【研究概要】

東北大学災害科学国際研究所災害放射線医学分野の稲葉洋平(いなば ようへい)助教および千田浩一(ちだ こういち)教授(医学系研究科放射線検査分野)、産業医科大学の盛武敬准教授ら、筑波大学の孫略研究員ら、九州保健福祉大学の佐藤圭創教授、筑波技術大学の平山暁教授の共同研究グループは、被ばく線量が多くなると血中の抗酸化能が低下する現象を発見しました。本研究によって、被ばく線量計を所持していない場合でも、大規模放射線事故災害時の被ばく線量を推定できる可能性が示唆されました。今後、放射線災害等におけるトリアージや健康被害の評価に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2018年5月、英科学誌 Scientific Reports誌(電子版)に掲載されました。

【研究内容】

原子力災害や放射線事故災害は、一度発生すると放射線被ばくなど非常に大きな社会的影響を与えます。放射線被ばくでは線量計等で被ばく線量を測定しますが、一般市民が被ばくしてしまうような大規模な放射線事故災害時では、ほとんどの市民は線量計を持っていないため、何らかの方法で被ばく線量を推定することが必要となります。これは、被ばく者の治療計画の立案と予後の予測、緊急医療措置のためのトリアージ(患者の振り分け)を行う際の判断材料となります。また、線量推定を実施することで、被ばくしていない人々の不安解消にも繋がると考えられます。被ばく線量の推定には、医師による診断や染色体検査など、いくつかの既存の方法があります。しかし、臨床症状による推定では個人差が非常に大きくなり、染色体検査には被験者からの細胞培養と検査者の熟練の技術が必要です。また、トリアージでは、0.5-1Gyの被ばくの有無を見分ける感度が必要とされています。このような背景において、精度・感度と迅速性・簡便性を合わせもつ推定法の開発が必要とされていました。

放射線の影響は抗酸化能と深く関係すると考えられています。そこで、東北大学の稲葉洋平助教および千田浩一教授、産業医科大学の盛武敬准教授ら、筑波大学の孫略研究員ら、九州保健福祉大学の佐藤圭創教授、筑波技術大学の平山暁教授の共同研究グループは、マウスをモデルに被ばくによる抗酸化能の変化を解析し、放射線事故災害時のヒトにおける被ばく線量推定や健康被害の評価法として確立することを目指していました。

抗酸化能の指標として、当研究グループが開発した独自技術であるi-STrap法によって、血液中の脂質ラジカル消去能を測定しました(図1)。i-STrap法は、全血の抗酸化能をわずか100μLの血液で測定できる画期的な方法です。マウスに異なる線量(0.5,1, 2および3Gy)の放射線を照射し、その直後から50日後まで、経時的に採血をしてi-STrap法により抗酸化能を測定しました(図2)。ESR(注4)の信号が大きくなるほど、抗酸化能が低いということを示します。0.5Gyと1Gyでは照射2日後まで抗酸化能が下がり、1週間後まで低い状態が続いた後、24日目までには、ほとんど照射前の値まで戻ります。2Gyと3Gyでは照射後7日~10日をピークに抗酸化能が下がり、少なくとも24日目まで統計的に有意に低い状態が続きます。このことは、血中の抗酸化能を測定することで事後に被ばく線量を推定できるということを示しています。

今後は、マウスにおける抗酸化能が低下するメカニズムの解明、そして、ヒトにおける生活習慣、年齢、性別などの個人差による影響の調査を進め、さらに、より高感度・高精度・簡便・迅速な手法の開発を目指す予定です。本研究によって、被ばく線量計を所持していない場合でも、大規模放射線事故災害時の被ばく線量推定ができる可能性が示唆されました。今後、放射線災害等におけるトリアージや健康被害の評価に貢献することが期待されます。

本研究の一部は、東北大学災害研の特定プロジェクト研究および災害研共同研究助成、厚労科研費(number 150803-02)の支援により行われました。

また、本研究の成果の一部は特許出願されています。(特願 2017-30440、特開 2018-136192)

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0491910_01.pdf

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