東大、室内発生世界最高磁場1200テスラを計測することに成功
発表日:2018年9月18日
室内発生世界最高磁場1200テスラを記録
未知なる強磁場科学の幕開け
1.発表者:
・嶽山 正二郎(東京大学物性研究所 教授)
・松田 康弘(東京大学物性研究所 准教授)
・澤部 博信(東京大学物性研究所 技術専門職員)
・中村 大輔(東京大学物性研究所 助教)
・池田 暁彦(東京大学物性研究所 助教)
2.発表のポイント:
◆新規導入した電磁濃縮(注1)超強磁場発生装置が完成し、これを用いて1200テスラ(注2)という強力な磁場を発生させ、それを高い信頼性で計測することに成功しました。
◆1000テスラを優に超えた超強力な磁場が発生可能であること、また、1000テスラ領域での極限的な超強磁場環境での物性計測が安定して行えることが示されました。
◆物性測定の新たなプローブとなり、強磁場科学の次世代に向けて新しい段階に踏み出しました。
3.発表概要:
東京大学物性研究所の嶽山正二郎教授と松田康弘准教授の研究グループ(澤部博信技術職員、中村大輔助教、池田暁彦助教)は、文科省最先端研究基盤事業「次世代パルス最強磁場発生装置の整備」計画の下に物性研究所附属国際超強磁場科学研究施設で整備してきた1000 テスラ級電磁濃縮超強磁場発生装置を完成させました。これを用いて1200 テスラという強力な磁場を発生し、高い信頼性で計測することに成功しました。室内での実験、かつ高度に制御された磁場として、これまでの世界最高記録730 テスラ(2011 年、同研究グループ)、および985 テスラ(2018 年、同研究グループ)を大幅に更新し、遂に1000 テスラを遥かに超えて1200 テスラに到達しました。
これまで同程度の時間空間スケールでの1000 テスラ超の磁場生成は爆縮法(注3)でしか得られておらず、磁場の安定性や計測の困難さから、物性測定には不向きでした。これに対し、電磁濃縮法による発生磁場は空間的にも時間的にも高い精度で制御可能であり、超強力な磁場が安定して発生できること、高精度の物理計測が容易であることを示しました。今後、超強磁場での物性計測に加え、高圧や極低温など他の極限物理環境と組み合わせての利用が期待されます。
1000 テスラ超の磁場では電子の運動が制限され、原子近傍で強い相互作用をする電子の性質を調べることで、物質の未知の機能を発見する事ができると期待されます。本手法による超強磁場下では、さまざまな信頼性ある物理計測が可能なため、半導体、ナノマテリアル、有機物質、超伝導体、磁性体で未解明の固体物理量子現象の解明により強力な手段を手に入れたことになります。人知による強磁場発生の世界で新たな歴史の一ページを開きつつあると言えます。
本成果は、測定技術および装置開発の分野での世界トップの権威ある科学誌であるAmerican Institute of Physics(AIP)出版局が刊行する科学誌「Review of Scientific Instruments」9 月17 日版に掲載されました。この論文はReview of Scientific Instruments のFeatured Article に選ばれ、またAIP のScilightにも掲載されました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
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