2018年11月19日(月)

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東大、「トポロジカル絶縁体」と「普通の絶縁体」の中間の新しい絶縁体を発見

2018/9/12 15:05
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発表日:2018年9月12日

「トポロジカル絶縁体」と「普通の絶縁体」の中間の新しい絶縁体の発見

1.発表者:渡邉 悠樹(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 講師)

2.発表のポイント:

◆これまで、全ての絶縁体は「普通の絶縁体」か「トポロジカル絶縁体」(注1)のどちらかに分類できると考えられてきた。

◆本研究により、両者の中間的な絶縁体が理論上存在することが世界で初めて明らかになった。

◆物質のトポロジー(注2)についての理解が進み、これを応用した新デバイス・量子コンピューターの開発などに将来的に役立つと期待される。

3.発表概要:

物質のトポロジーに関する研究は、今世紀以降、世界中で積極的に行われてきたが、2016年にノーベル物理学賞がトポロジカル相の研究に授与されてから、一層活発化している。

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の渡邉講師は、米ハーバード大学のVishwanath教授、マサチューセッツ工科大学のPo研究員との国際共同研究で、近年注目されている「トポロジカル絶縁体」に関する新理論を提案した。これまで、全ての絶縁体は「普通の絶縁体」か「トポロジカル絶縁体」かのどちらかに分類できると考えられてきたが、今回の研究で、新たに両者の中間的な絶縁体(「脆弱なトポロジカル絶縁体(fragile topological insulator)」図1)が存在することが理論的に解明された。

本研究で見つかった絶縁体は、それ自体はトポロジカル絶縁体のように振る舞うが、普通の絶縁体と重ねるだけでトポロジカルな性質を失ってしまうという点が、これまで知られていたどのトポロジカル絶縁体とも異なる。

物質の実現しうる新しい可能性を見出すことは、近年の物性物理学の大目標の一つである「トポロジカル相の完全な分類」の達成へ向けて、基礎科学を大きく前進させる意義がある。本研究の成果は、物質のトポロジーを利用した新デバイスの発明、スピントロニクス技術の発展、量子コンピューターの開発などに将来的に結びつくことが期待される。

本研究成果はPhysical Review Letters誌のオンライン版に日本時間 9月13日掲載予定であり、Editor's suggestionにも選ばれている。

4.発表内容:

従来、身の回りの物質は伝導性や磁性といった性質に着目することで分類されてきた。しかし今世紀に入り、これまで見過ごされてきた「トポロジー」の違いによっても物質の性質が大きく変わることが明らかになり、物質のトポロジカルな性質は世界中で盛んに研究されるようになった。例えばトポロジカル相の代表例である「トポロジカル絶縁体」は、物質内部は絶縁体であるにもかかわらず物質表面は金属になるという興味深い性質を示す。この表面金属状態は、例えばスピントロニクスの分野に応用されており、低消費電力もしくは高速な次世代のデバイスや量子コンピューターなどの開発につながることが期待されている。

近年の物性物理学においては、この「トポロジカル絶縁体」の候補物質を探す応用的な研究の他に、「互いに異なるトポロジカル絶縁体は一体どれだけの種類があるのか」という分類を完成させる研究が一大目標になっており、世界中で多くの理論物理学者が取り組んでいる。本研究の成果は、「脆弱なトポロジカル絶縁体」というこれまで知られていなかったタイプのトポロジカル絶縁体が存在するということを、世界に先駆けて見出したことである。

具体的には、本研究で見つかった絶縁体は、それ自体はトポロジカル絶縁体のように振る舞うが、普通の絶縁体と重ねるだけでトポロジカルな性質を失ってしまうという点が新しい。通常のトポロジカル絶縁体は「チャーン数(注3)」や「Z2 トポロジカル数(注4)」のような「巻きつき数 W(注5)」によって守られているために、このようなことは起こり得ない(図2参照)。本研究で見つかった例は、トポロジカル絶縁体にはこれまで我々が考えていた以上に豊富な種類があることを意味している。

関連して、米プリンストン大学の研究グループは英科学誌ネイチャーに「トポロジカル量子化学(Topological Quantum Chemistry)」という理論を昨年発表し、注目を集めた(参照1)。本研究で発見された絶縁体は、この理論の主要な定理に対する「反例」(注6)になっており、この点においても基礎理論の進展に重要な意義を持っている。

さらに、本研究で発見された絶縁体は、最近発見され話題となっている「ずらして重ねられた二層グラフェン」(注7)の性質にも深く関わっていることが指摘されており(参照2)、今後のさらなる研究が期待される。

(参照1)B. Bradlyn et al., Nature 547, 298 (2017)

(参照2)L. Zou et al, arXiv:1806.07873

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0490334_01.pdf

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