2018年11月22日(木)

プレスリリース

東大、分子モーターたんぱく質KIF26Aによる痛みの体感短縮機構を解明

2018/9/12 0:05
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発表日:2018年9月12日

分子モーターたんぱく質KIF26Aによる

痛みの体感短縮機構の解明

1.発表者:

王 力(研究当時:東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学 特任研究員)

田中 庸介(東京大学大学院医学系研究科 細胞構築学分野 講師)

王 斗斗(東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学 特任研究員)

森川 桃(東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学 特任研究員)

周 如贇(研究当時:東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学 特任研究員)

本間 典子(研究当時:東京大学大学院医学系研究科 細胞構築学分野 講師)

宮本 祐希(東京大学大学院医学系研究科 博士課程1年生)

廣川 信隆(東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学 特任教授)

2.発表のポイント:

◆疼痛が遷延するキネシン分子モーター「KIF26A」(注1)ノックアウトマウスの解析から、KIF26Aが「接着斑キナーゼ」(FAK、注2)を微小管上につなぎとめ「Srcファミリーキナーゼ」(SFK、注3)のアクセスから守ることで、細胞からのカルシウムイオン(注4)の排出を助ける「細胞膜カルシウムポンプ」(PMCA、注5)を活性化し、疼痛の持続時間(注6)を短くしていることを明らかにした。またSFK阻害剤PP2を投与したところ、痛みに対する反応の遷延化が顕著に改善した。

◆これまで疼痛研究は痛みに対する過敏性の軽減を主に実験の尺度としてきたが、本研究により痛みの持続時間を短縮するKIF26A-FAK-PMCA系の分子機構がはじめて明らかとなり、新しい持続痛・慢性痛の治療ターゲットとしてのこの系の有効性が、細胞から個体レベルまで一貫した研究結果によって示された。

◆今後、このKIF26Aノックアウトマウスを用いることで、SFK/FAKシグナル伝達の亢進による痛みの持続時間の遷延やがん転移の新規治療法にむけて、研究が大きく前進することが期待される。

3.発表概要:

我々のあらゆる細胞の中には、微小管の線維に沿って細胞の中心と周縁を結ぶ物質輸送のシステムが張りめぐらされ、45種類以上のキネシン分子モーターが、さまざまな種類の積荷複合体を秩序だって輸送している。一方、それぞれの細胞の状態は「細胞内シグナル伝達」によってグローバルに規定されている。また細胞内のカルシウムを速やかに排出して神経細胞の興奮を収束させる「細胞膜カルシウムポンプ」は、活性型FAKによるリン酸化によってその機能が阻害される。これまで分子モーターは「シグナル伝達」の手足となるものと信じられてきたが、ここ数年の本グループの研究により、分子モーターがシグナル伝達分子を運び分けることによって、細胞内シグナルをさまざまに制御していることが明らかになりつつある。

東京大学大学院医学系研究科 寄付講座 分子構造・動態・病態学の廣川信隆特任教授、細胞構築学分野の田中庸介講師、分子構造・動態・病態学の王力特任研究員(研究当時)らは今回、KIF26A分子モーターがFAKを末梢感覚ニューロンの深部の微小管につなぎとめることで細胞外基質(注7)からインテグリン(注8)を介したFAKの活性化を阻害し、神経細胞からのカルシウムの排出を促進して、末梢神経細胞の興奮を早く鎮静化させる作用を明らかにした。まずKif26a遺伝子欠損マウスは、ごく軽く尾をつまんだだけで数分間にわたって疼痛反応が遷延していた。そこで末梢感覚ニューロンの性質を調べると、カプサイシン(注9)あるいは電気刺激によってニューロンが一度興奮すると、その刺激を取り去っても数分間にわたり細胞内カルシウム上昇が続き、痛みが遷延していくことがわかった。一方、超解像度顕微鏡の観察により、KIF26AがFAKを微小管につなぎとめており、KIF26AがないとFAKが微小管から外れて細胞周辺部に出てきてしまうことがわかった。このことによってノックアウトマウスではFAKが細胞膜直下のインテグリン・SFK複合体に結合しやすくなり、FAKシグナル伝達が異常に活性化された結果としてPMCAによる細胞内からのカルシウム排出が妨げられていたことがわかった。このカルシウム排出と疼痛の遷延は両方とも、SFK阻害剤であるPP2を投与することで、細胞レベルでも個体レベルでも実際に治療できることがわかった。

本研究はKIF26A分子モーターによる細胞内シグナル伝達の新しい制御機構を発見したものであり、これらの成果により遷延性の疼痛、がん等の新規治療法の開発に道を開くものである。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0489990_01.pdf

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