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東大、軽度認知障害における認知機能低下の加速因子を同定

2018/7/12 13:05
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発表日:2018年7月12日

軽度認知障害における認知機能低下の加速因子を同定

1.発表者:

岩田 淳(東京大学医学部附属病院 神経内科 講師)

岩坪 威(東京大学大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 神経病理学 教授)

2.発表のポイント:

◆日本人の軽度認知障害において認知機能低下の進行を促進、抑制する因子を特定した。

◆認知機能の悪化を促進する因子としては、女性であること、そして女性ではさらに軽度の腎機能低下があることが見出された。この傾向は日本人女性においてのみ見られた。一方で教育年数の長い男性では悪化が抑制された。

◆女性では特に高血圧などの生活習慣病の管理が重要である事が示唆された。

3.発表概要:

J-ADNI研究(注1)では、234名のものわすれを主体とする軽度認知障害(注2)の被験者の認知機能を、最長3年間追跡しました。そのなかで、認知機能の低下に関与する要素を様々な角度から検討し、性差、教育歴がその進行に対して影響をもつことを見いだしました。女性の軽度認知障害被験者の認知機能は男性に比べて速く悪化しました。教育年数の長い男性の被験者では悪化は緩徐でした。軽度認知障害の背景にはアルツハイマー病以外の疾患も含まれますが、J-ADNI研究で女性が早く悪化する原因は、アルツハイマー病の方が多く含まれていたためではありませんでした。女性の軽度認知障害の方が悪化し易い要因として、慢性腎臓病(注3)のグレードが高いことが見出されました。その理由として、長年の高血圧や動脈硬化によって脳の小血管の障害を来たすことが、認知機能障害の進行に関係することを想定しました。

4.発表内容:

J-ADNI研究では、認知機能を測定する尺度としてミニメンタル検査(MMSE)、アルツハイマー病評価尺度(ADAS-cog)、日常生活での自立度を評価する機能評価質問紙法(FAQ)そして全般的な認知機能と日常生活を評価する臨床認知症評価法(CDR-SOB)を最長で3年間追跡し、評価しました。軽度認知障害と診断された234名のうち女性はほぼ半数の118名でした。男性と女性の平均年齢はそれぞれ72.8、72.9歳でほぼ同等でしたが、平均教育年数は14.1年、11.9年と男性の方が上回っていました。それぞれの尺度を3年間追跡したところ、全てについて女性の方が早く悪化しました(図A)。3年間のうちに認知症レベルに到達した率を算出すると、男性では44%、女性で60%と女性の方が高率に認知症へ移行していました(図B)。軽度認知障害は様々な疾患を背景とします。このため、アルツハイマー病を背景とする軽度認知障害の被験者が多ければ当然進行は早くなります。しかし、脳脊髄液検査やアミロイドPET検査によって背景にアルツハイマー病があるかを検討した結果では、男性では62.9%、女性では69.1%と大きな差が見られませんでした。これらの検査は全ての方で施行できたわけではないため、すべての方で施行できたアルツハイマー病の最も強い遺伝的な危険因子であるAPOE遺伝子の多型を評価しました。危険因子ε4保有者の率は、男性で50.0%、女性で54.2%と、これについても大きな差はありませんでした。つまり背景にアルツハイマー病があるかどうかではなく、それ以外の要素で女性の方が早く悪化していたことが推定されます。

一方で、教育年数での比較では、全ての評価項目について、16年以上の教育(大学卒業以上)を受けた方の進行が遅いことがわかりました(図C)。性別で分けて解析したところ、この効果は男性では認められましたが女性では認められませんでした。このことから、教育年数が長いことで男性では認知予備能(注4)が培われた可能性が示されました。女性で進行が早い原因をさらに追求した結果、慢性腎臓病のグレードが高い方で進行が早いことが分かりました(図D)。慢性腎臓病のG1(正常)からG5(末期腎不全)までのグレードのうち、J-ADNI研究の参加者にはG1からG3(中等度低下)までの方が含まれました。このうち、女性でG1の方はG2(軽度低下)以上の方に比べて進行が遅いことがわかりました。その理由として、女性ではG2以上の方は微小な動脈硬化性の病変、すなわち慢性虚血性変化(注5)が脳で生じやすく、認知機能の悪化に拍車をかけている可能性が推測されました。一方で,北米のADNI研究データを利用した解析では同様の結果は得られませんでした。本研究の結果からは、日本人では高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の改善が軽度認知障害から認知症への移行(注6)の抑制に重要であり、その効果は特に女性に顕著であると考えられます。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0484871_01.pdf

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