ATRとJSTなど、多様なヒト疾患モデルにおける全身網羅的多器官遺伝子発現地図を完成
発表日:2018年3月30日
多様なヒト疾患モデルにおける全身網羅的多器官遺伝子発現地図を完成
~疾患予測・診断マーカーや治療ターゲット探索に活用~
■ポイント
○心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病、がん、若年性認知症などさまざまなヒト疾患の発症から悪化までの継時的な変化を表す、マウスモデルにおける全身網羅的な多器官遺伝子発現地図を完成させました。
○本地図から、皮膚が疾患のセンサーとして働いていることが明らかになりました。
○腎臓疾患およびそれに付随する関連疾患において、FGF23(骨由来のホルモン)が介する骨-皮膚連関という器官同士のクロストーク(相互作用)が存在することを発見しました。
○本地図を活用、発展・拡大化することで、今後、さらに多くの疾患予測・診断バイオマーカーや疾患治療ターゲットの発見、それらを基盤にした診断方法および治療薬の開発が期待されます。
JST 戦略的創造研究推進事業において、ERATO 佐藤ライブ予測制御プロジェクトの佐藤 匠徳 研究総括(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 佐藤匠徳特別研究所 所長)らとKarydo TherapeutiX株式会社(代表取締役 佐藤 匠徳)は、さまざまなヒト疾患モデルをカバーする全身網羅的な多器官遺伝子発現地図を完成させました。
さらに本地図を活用し、数理統計学的な手法で解析することで、皮膚がさまざまな疾患のセンサーとして働いていることを明らかにしました。その1つの例として、腎臓疾患およびそれに付随する関連疾患において、骨由来のホルモン(注1)のFGF23(注2)が介する骨-皮膚連関という、これまで知られていなかった器官同士のクロストークが存在することを突き止め、腎臓疾患発症の有無のみならず、さまざまな原因で発症する腎臓疾患の原因まで予測・診断できる皮膚の25種バイオマーカー(注3)パネルも作成しました。
本地図をiOrgans Atlas(アイ・オーガンズ・アトラス)と命名し、学術研究のために自由に活用できる非営利目的のデータベースとして作成・公開しました( http://www.jst.go.jp/pr/announce/20180330/i-organs.atr.jp)。本地図の活用法・解析法に関しては特許取得済みです。また、腎臓疾患およびそれに付随する関連疾患の早期発見を可能にする皮膚バイオマーカー、その他本論文中では未発表の他の疾患バイオマーカーや疾患治療ターゲット候補分子などに対する数多くの特許も出願済みで、これらを活用した疾患の早期診断方法や治療方法の開発を、ERATO 佐藤ライブ予測制御プロジェクト発のバイオベンチャー企業Karydo TherapeutiX株式会社で展開しています。
本研究は、自治医科大学 分子病態治療研究センター 黒尾 誠、椎崎 和弘、黒須 洋、国立病院機構呉医療センター 中国がんセンター 山下 芳典、尾崎 慎治らの協力を得て行いました。
本研究成果は、2018年3月29日(米国東海岸時間)にCell Press「iScience」のオンライン速報版で公開されます。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)
研究プロジェクト:「佐藤ライブ予測制御プロジェクト」
研究総括:佐藤 匠徳(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 佐藤匠徳特別研究所 所長)
研究期間:平成25年10月~平成31年3月
上記研究課題では、生命現象の多階層システムの「根底にある支配的メカニズム」を解明し、さらに多階層システムの破綻と疾患との因果関係を明らかにします。そして、多階層システムの全体像から個別の現象までが統合的に捉えられる「いきものの設計図」を作成することを目指しています。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース