2018年10月16日(火)

プレスリリース

東大など、銅酸化物高温超伝導体で超伝導の「さざ波」のヒッグスモード観測に成功-未知の超伝導体研究に活用

2018/3/9 14:50
保存
共有
印刷
その他

発表日:2018年3月9日

銅酸化物高温超伝導体で超伝導の“さざ波"のヒッグスモードの観測に成功

1.発表者:

島野 亮(東京大学低温センター・大学院理学系研究科物理学専攻 教授)

勝見 恒太(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程 2年)

青木 秀夫(産業総合技術研究所電子光技術研究部門 招聘研究員、東京大学名誉教授)

2.発表のポイント:

◆銅酸化物高温超伝導体で、素粒子のヒッグス粒子に相当する超伝導のさざ波であるヒッグスモードの観測に初めて成功しました。

◆今後、ヒッグスモードの特性を詳細に調べることで、高温超伝導体の性質がより明らかになりその理解が進むことが期待されます。

◆未知の超伝導体の性質を調べる新しい手法として役立つことが期待されます。

3.発表概要:

東京大学低温センター・理学系研究科物理学専攻島野亮教授らの研究グループは、理化学研究所辻直人研究員、産業技術総合研究所電子光技術研究部門青木秀夫招聘研究員(東京大学名誉教授)の理論研究グループ、およびパリ・ディドロ大学 Yann Gallais 教授(2017年1月-3月 東京大学理学系研究科 GSGC 教授)らと共同で、銅酸化物高温超伝導体でヒッグスモードと呼ばれる超伝導の励起(さざ波)が存在することを実験により初めて明らかにしました。素粒子物理でのヒッグス粒子に相当するヒッグスモードは、その理論予測から約50年を経て、最近標準的な低温超伝導体で発見され、その観測は超伝導の性質を調べる新しい手法として注目されていました。これが、高温超伝導体でどうなるかに大きな興味がもたれていましたが、高温超伝導体でもヒッグスモードが存在することが実験により初めて明らかになり、これから高温超伝導体の性質の理解が一層深まるものと期待されます。

4.発表内容:

超伝導とは、金属の温度を冷やしたときに電気抵抗がある温度以下でゼロになり、同時に磁場が超伝導体内部に侵入できなくなる現象です。この特異な性質を持つ超伝導体は、MRI診断装置、リニアモーターカー、超高感度量子磁束干渉計、送電線、天文観測のための超高感度の電波(サブミリ波)センサーなど、さまざまな分野で幅広く応用されています。超伝導の発見は今から100年以上前に遡ります。ヘリウムの液化に世界で初めて成功したオランダの物理学者カマリン-オンネスは1911年、水銀を液体ヘリウムで冷やすと摂氏-268.8℃(絶対温度で4.2K)で電気抵抗が突然ゼロになることを発見しました。その後長らく、超伝導は非常に低い温度で生じる現象と考えられていましたが、1986年に銅酸化物高温超伝導体が発見され、液体窒素温度摂氏-196℃(77K)以上でも超伝導が生じることが示されました。その後、30年以上にわたり室温超伝導実現の期待のもとに超伝導発現の機構解明が進められ、膨大な研究の積み重ねにより、高温超伝導体の理解は著しく進歩しました。しかし、超伝導の発現機構そのものは未だ完全には解明されておらず、現代の物性物理学の最大の難問の一つとされています。

さて、金属中では電子は互いに衝突を繰り返しながら、それぞれはバラバラに動いています。ところが温度が下がり超伝導になると、電子同士は対をつくり、マクロな数の電子が、位相がきれいに揃った一つの波のような状態になります。これは、液体から固体、常磁性から強磁性といった、秩序のない状態から秩序のある状態への相転移現象の一つです。この秩序だった静寂の超伝導状態に、瞬間的に刺激(擾乱)を加えると、その秩序のさざ波が生じます。このさざ波は、素粒子のヒッグス粒子(注1)に相当していることからヒッグスモードと呼ばれます(注2)。超伝導のヒッグスモードは理論予測から約50年を経て、最近島野教授らによって低温超伝導体(注3)で発見され、その観測は超伝導の性質を探る新しい方法として世界的にも注目されていました。今回、東京大学低温センター・理学系研究科物理学専攻島野亮教授らの研究グループは、理化学研究所辻直人研究員、産業技術総合研究所電子光技術研究部門青木秀夫招聘研究員(東京大学名誉教授)の理論研究グループ、およびパリ・ディドロ大学Yann Gallais 教授(2017年1月-3月東京大学理学系研究科 GSGC 教授)らと共同で、銅酸化物高温超伝導体でもこのヒッグスモードが存在することを実験により初めて明らかにしました。銅酸化物高温超伝導体の特徴の一つは、超伝導になる温度が高いだけでなく、超伝導を担う電子対が相対的に角運動量を持っている(回転している)点にあり、d波超伝導体と呼ばれます。この性質には、電子同士を結びつける糊の起源(電子間のクーロン斥力に起因する磁性)が深く関係していると考えられています。このような特徴を持つ高温超伝導体で、超伝導のさざ波であるヒッグスモードが観測されるかどうかは興味深い問題で、様々な理論予測がなされていました。島野教授らのグループは、テラヘルツ波(注4)と呼ばれる波長0.3mm程度の電磁波パルスを高温超伝導体に強く照射することで、高温超伝導体の電子対を揺らし、その揺れ方を光を使って詳細に調べることでヒッグスモードの存在を突き止めました。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0473916_01.pdf

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ速報トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報