2019年3月21日(木)

プレスリリース

東大、ペロブスカイト太陽電池を長寿命化-リチウムイオン内包フラーレンを有機半導体に加え抗酸化

2018/3/9 14:45
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発表日:2018年3月9日

ペロブスカイト太陽電池の長寿命化

-リチウムイオン内包フラーレンを有機半導体にドープ-

1.発表者:

松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 特任教授)

田 日(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 特任助教)

丸山 茂夫(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻 教授/産業技術総合研究所

     クロスアポイントメントフェロー エネルギーナノ工学研究ラボ長)

2.発表のポイント:

◆電子を受け取る能力が高いリチウムイオン内包フラーレンを有機半導体に加えることにより、空気に対する安定性が高いペロブスカイト太陽電池を作製しました。

◆リチウムイオン内包フラーレンは電子を受け取った後、中性のリチウム内包フラーレンとなり、その抗酸化作用により、ペロブスカイト太陽電池の耐久性が10倍向上しました。

◆1000時間の疑似太陽光照射下、効率低下が10%以内という実用化の要件をクリアし、耐久性の優れた長寿命のペロブスカイト太陽電池の実用化へ向けた研究の促進が期待されます。

3.発表概要:

20%近いエネルギー変換効率を示すペロブスカイト太陽電池は、塗布プロセスが可能な有機太陽電池と効率が高い無機太陽電池の優れた点を併せ持ち、世界中で活発に研究が行われています。膨大な研究により変換効率が高まってきた今、議論の中心は耐久性の改善に移りつつありますが、ペロブスカイト太陽電池は水や酸素に弱いことが以前からの課題でした。東京大学大学院工学研究科の松尾豊特任教授、田日特任助教、丸山茂夫教授らは、中国・東北師範大学の上野裕副教授らと共同で、ペロブスカイト太陽電池の耐久性を大きく向上させる新物質を見いだしました。日本のベンチャー企業で開発された「リチウムイオン内包フラーレン」を、ペロブスカイト太陽電池に使われる有機半導体に混ぜることにより、耐久性が10倍向上するペロブスカイト太陽電池を作製することに成功しました。このことにより、疑似太陽光照射下1000時間での効率低下を10%以内に収めることができ、ペロブスカイト太陽電池の実用化の目安とされる要件をクリアしました。ペロブスカイト太陽電池の長寿命化を可能とする材料を見いだしたことにより、ペロブスカイト太陽電池の実用化へ向けた研究が促進されるものと期待されます。

4.発表内容:

今世紀に入り新しい太陽電池の研究はますます盛んになり、エネルギー関係の研究を取り扱う新しい学術雑誌の発刊も相次いでいます。特に現在、新しい太陽電池の中ではペロブスカイト太陽電池(注1)の研究が活発であり、エネルギー問題の解決へ向けた研究が続けられています。ペロブスカイト太陽電池は20%近いエネルギー変換効率を示すものの、耐久性に大きな課題を残しています。ペロブスカイト太陽電池の発電層(注2)に使われる有機金属ペロブスカイトは水や酸素に大変不安定で、その課題の克服へ向けた研究も広く行われるようになってきました。そもそもペロブスカイト太陽電池は、電荷選択層(注3)であるホール輸送層(注4)に有機半導体を用いることで、効率が大きく向上し、研究が発展してきた経緯があります。しかしながら、有機半導体そのもののホールを輸送する特性は十分でなく、有機半導体にリチウム塩(注5)を混ぜて(ドープするといいます)、酸素を含む空気中で光を当てて有機半導体から電子を引き抜く(ホールをドープする)必要があります。用いるリチウム塩は吸湿性をもち、水分を引き寄せます。また、電子を引き抜くのに酸素が必要です。水や酸素を避けたいはずのペロブスカイト太陽電池で、吸湿性材料や酸素が必要という矛盾がありました。

今回、研究グループは、従来のリチウム塩を用いず、リチウムイオン(Li+)をフラーレンC60の殻で包んだ新しいリチウム塩(リチウムイオン内包フラーレン、Li+@C60、注6)を用い、ペロブスカイト太陽電池の耐久性を10倍向上させることに成功しました。日本のベンチャー企業で開発されたリチウムイオン内包フラーレンは、リチウムイオンが疎水性のC60の中にあるため吸湿性が低く、高い電子親和力(注7)をもちます。電子を引き抜く酸素を別途必要とせず、有機半導体であるspiro-MeOTADから電子を引き抜くことができます。有機半導体からリチウムイオン内包フラーレンに電子移動がおこり、ホールがドープされた有機半導体と、中性のリチウム内包フラーレン(Li@C60、注8)ができます(図1)。この電子移動は、ホールドープされた有機半導体と中性のリチウム内包フラーレンが示す、特徴的な光吸収スペクトルで確認されました(図2b)。このとき生成する中性のリチウム内包フラーレンは抗酸化作用をもち、太陽電池に微量に含まれる酸素を取り除く効果をもちます。

こうしてリチウムイオン内包フラーレンの疎水性とリチウム内包フラーレンの抗酸化作用により、水や酸素に対してより安定なペロブスカイト太陽電池(図2a)が実現しました。未封止の素子では、独特な耐久性挙動を示しました(図3a)。従来のペロブスカイト太陽電池では、未封止であると、吸湿性のあるリチウム塩を含む有機半導体層がまわりの水を引きつけ、50時間で素子は働かなくなります。今回のリチウムイオン内包フラーレンを含む未封止の素子では、50時間くらいかけてゆっくり変換効率があがり、最高効率点から約500時間かけて効率が低下していきました。これはリチウム内包フラーレンにより酸素が遮断されるため、有機半導体中のホール生成が遅く、一方、水や酸素の遮断により発電層の分解も遅いためです。また、寿命は10倍長くなったといえます。最高点でのエネルギー変換効率は、16.8%でした(図3b)。また、封止した素子では、実用化の目安とされる疑似太陽光連続照射1000時間で効率の低下が10%以内という要件に収まりました(図4)。リチウムイオン内包フラーレンは、ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に貢献するだけでなく、有機エレクトロニクス材料の高機能化と安定性向上にも資すると期待されます。

本研究は、科学研究費補助金・基盤研究(S)「高機能化ナノカーボン創成と革新的エネルギーデバイス開発」の支援により実施されました。

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0473911_01.pdf

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