東大と理研など、磁気光学効果の新たな起源を解明
発表日:2018年1月27日
磁気光学効果の新たな起源を解明
-反強磁性金属での磁気光学カー効果を世界で初めて観測-
1.発表者:
肥後 友也(東京大学物性研究所 ナノスケール部門 特任研究員/同量子物質研究グループ併任)
是常 隆(研究当時:理化学研究所 創発物性科学研究センター 計算物質科学研究チーム上級研究員/現:東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻 准教授)
鈴木 通人(理化学研究所 創発物性科学研究センター 計算物質科学研究チーム 研究員)
有田亮太郎(理化学研究所 創発物性科学研究センター 計算物質科学研究チーム チームリーダー)
中辻 知(東京大学物性研究所 量子物質研究グループ 教授)
2.発表のポイント
◆反強磁性金属における自発的な磁気光学カー効果を世界で初めて観測した。
◆観測した磁気光学カー効果の微視的な起源が、磁気八極子によるものであることを解明し、磁気八極子を持つ反強磁性ドメインのイメージングに室温で成功した。
◆反強磁性ドメインの非破壊・非接触な直接観察手法の確立は、反強磁体での機能を開拓する上で非常に重要な成果であり、熱電変換素子や磁気デバイス開発の急速な進展が期待される。
3.発表概要:
東京大学物性研究所(所長:瀧川仁)の肥後友也 特任研究員、中辻知 教授らの研究グループは、理化学研究所 創発物性研究センター計算物質科学研究チーム、米国の研究グループと協力して、室温において自発的に磁気光学カー効果(注1)を示す反強磁性(注2)金属の開発に世界で初めて成功しました。
開発したマンガンとスズからなる金属間化合物Mn3Snは、互いを打ち消しあうように配置された複数のスピンから構成される「クラスター磁気八極子(注3)」というスピン秩序構造を持つ反強磁性体です。今まで無磁場かつ磁化を持たない反強磁性状態では、光-磁気応答の一つである磁気光学カー効果は現れないと考えられていました。今回この常識を破り、磁気八極子を持つ反強磁性体において、磁場と磁化がゼロの状態においても磁気光学カー効果が現れることを見いだし、磁気八極子が作る磁気ドメインの直接観測にも成功しました。この発見により、磁気光学素子の新たな開発指針が築かれたとともに、今回確立した磁気光学カー効果を用いた非破壊・非接触な反強磁性ドメインの直接観察手法は、近年特に注目が集まっている反強磁性体を用いた熱電変換素子(注4)やスピントロニクス素子といった、反強磁性ドメインの制御が重要となる次世代の磁気デバイス研究への広範囲な応用展開が期待されます。
本研究成果は国際科学雑誌Nature Photonicsの2018年1月26日付けオンライン版に公開される予定です。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース