東邦大など、多発性硬化症の発症メカニズムの一端を解明
発表日:2017年12月28日
多発性硬化症の発症メカニズムの一端を解明
~発症原因となるリンパ球の分化に必要な遺伝子を発見~
東邦大学の山崎創准教授と九州大学の住本英樹教授らの研究グループは、遺伝子改変マウスを用いた病態モデルの解析により、多発性硬化症などの自己免疫疾患の原因として近年注目を集めているリンパ球であるTh17細胞の分化に、JunBという転写因子が必要であることを見出しました。
今回の発見により、自己免疫疾患の発症メカニズムの一端が解明されたほか、その治療に向けた新たなアプローチの可能性が広がりました。
この成果は12月12日に雑誌Scientific Reportsにて発表されました。
◆発表者名:
山崎 創(東邦大学医学部生化学講座 准教授)
◆発表のポイント:
●免疫の司令塔と呼ばれるヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞は、多発性硬化症をはじめとする自己免疫疾患の発症に関与することから近年注目を集めていますが、体の中でTh17細胞がどのようにできるかについては不明な点が多くありました。今回、遺伝子改変によりJunBという転写因子(DNAに結合し、遺伝子の発現を制御するタンパク質)を欠損したマウスでは、Th17細胞がつくられなくなっていることを明らかにし、さらに、JunB欠損マウスは、ヒトの多発性硬化症の動物モデルである自己免疫性の脳脊髄炎を全く発症しなくなることを示しました。
●今回着目した転写因子であるJunBは、これまでに、皮膚のバリア維持機構や骨髄系細胞の機能調節に重要であることが知られていましたが、ヘルパーT細胞でどのような役割を果たすかについてはわかっていませんでした。今回の発見により、ヘルパーT細胞が機能を獲得するのに必要な新たな仕組みが明らかになりました。
●多発性硬化症をはじめ、リウマチ関節炎や乾癬などの自己免疫疾患は、治療戦略はもとより、病態の発症メカニズムについても詳細がわかっていませんでした。今回の発見に基づき、JunBのはたらきを阻害するというアプローチにより自己免疫疾患を抑えるという新しい治療法の可能性が開けました。
◆発表概要:
ヘルパーT細胞の一種であるTh17細胞は、感染防御に重要な役割を果たしている一方で、様々な自己免疫疾患の原因ともなるため、体の中でTh17細胞のはたらきが正しく調節されることは非常に重要です。しかし、この細胞の分化や機能がどのように調節されているかについては十分に理解されていませんでした。今回、東邦大学医学部の山崎創准教授らは、遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)を使った解析を中心に、遺伝子の発現調節をおこなうJunBという転写因子がTh17細胞の分化に重要であることを明らかにしました。JunBを欠損するマウスは、ヒトの多発性硬化症の動物モデルである自己免疫性の脳脊髄炎を全く発症しなくなりました。今回の成果をもとにして、JunBの質的・量的な調節を通じてTh17細胞の機能を変化させることにより、自己免疫疾患に対する新たな治療法を開発できる可能性が示されました。
※以下は添付リリースを参照
以上
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