阪大・兵庫県立大・理研・JST、安定なC‐H結合を室温で水酸化できる人工酵素の活性メカニズムを解明
発表日:2017年12月15日
安定なC‐H結合を室温で水酸化できる人工酵素の活性メカニズムを解明
~天然炭素資源の有効利用に期待~
■ポイント
○安定なC‐H結合を室温でC‐OH結合に水酸化するメカニズムにおいて、重要な化学種を発見。
○寿命が短く観測が困難であった高活性な人工酵素の活性種の観測・同定に初めて成功。
○豊富な天然炭素資源の有用物質への変換に有効な人工酵素や分子触媒・固体触媒への応用に期待。
大阪大学 大学院工学研究科の大洞 光司 助教および林 高史 教授らの研究グループは、兵庫県立大学 大学院生命理学研究科 城 宜嗣 教授および理化学研究所 放射光科学総合研究センター 杉本 宏 専任研究員と共同で、安定なC‐H結合(注1))を触媒的にC-OH結合に変換するマンガンポルフィセン(注2))とミオグロビン(注3))を複合化した人工酵素の反応活性種を観測し、マンガン5価オキソ種(注4))であることを世界で初めて明らかにしました(図1)。
これまで天然炭素資源などの利用において、炭素と水素の結合(C‐H結合)は非常に安定であり、反応性が乏しく有用物質への変換において大きな問題となっていました。この安定なC‐H結合を効率的にC-OH結合に変換する水酸化能を有する天然酵素が注目されてきましたが、その高い活性が理由で反応活性種の解明は困難と考えられており、酵素の反応メカニズムの解明やさらなる改良に重要であるにもかかわらず、活性種は非常に限られた系でしか解明されていませんでした。
今回、大洞助教、林教授らの研究グループは、活性種を得るためにストップトフロー法(注5))という手法を用いて、安定なC‐H結合を効率的にC-OH結合に変換するマンガンを含む人工酵素の活性種がマンガン5価オキソ種であることを世界で初めて同定しました。さらに得られる反応活性種が、天然酵素のような複雑なたんぱく質環境を必要とせずに安定なC‐H結合を室温で水酸化可能であることを示しました。これにより、今後の人工酵素の設計が可能になり、複雑な有機化合物の位置・立体選択的な水酸化や、豊富な天然炭素資源の有用物質への効率的変換に貢献します。
本研究成果は、米国科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」に、2017年12月14日(米国東部時間)にオンライン公開されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)「革新的触媒の科学と創製」および文部科学省 科学研究費補助金新学術領域研究「高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出」の支援を受けて行われました。
※以下は添付リリースを参照
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