2017年11月24日(金)

プレスリリース

ATR、ゼブラフィッシュの個体発生における循環器系の新しい役割を発見

2017/11/15 15:05
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発表日:2017年11月15日

ゼブラフィッシュの個体発生における循環器系の新しい役割を発見

~循環器系の不全に伴う様々な疾患の原因究明に期待~

 

 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)佐藤匠徳特別研究所 所長 佐藤匠徳(国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)佐藤ライブ予測制御プロジェクト 研究総括)らは、セブラフィッシュの発生過程(組織・臓器の形成過程)における循環器系の新たな役割を明らかにしました。

 本研究は、循環器系の働きについて新たな知見を提示するとともに、本研究で得られたデータ群を用いることによって、循環器系の役割のより深い理解、またヒトにおける循環器系の不全に伴う様々な異常(疾患)の原因究明に貢献できることが期待されます。

 本研究成果は、2017年11月15日(英国時間)に英国科学誌「Biology Open」のオンライン版で公開されます。

<研究の背景>

 循環器系(心臓や血管)は全身への酸素の運搬に必須であるだけでなく、ホルモンや免疫細胞など臓器間でのコミュニケーションに必要な物質が多く含まれていることが知られています。また、哺乳類では発生過程で循環器系に異常が起こると、臓器の形成に異常が起こり生まれてこなくなります。一方、ゼブラフィッシュでは、他の脊椎動物同様、循環器系が他の臓器に先んじて形成されますが、血管がなくても発生が進行し、臓器も形成されます。このことから、本研究では、ゼブラフィッシュをモデルに用いて循環器系が他の組織や臓器の形成にどのように影響しているか、特に、循環器系が酸素の運搬以外にどのような働きをするのか、について調べました。

<研究の内容>

 ゼブラフィッシュにおいて、発生過程特異的に心筋細胞のみをアブレーション(注1)できるトランスジェニック(注2)(心筋がない個体)、心筋特異的に発現している遺伝子の変異体(心拍が無い、あるいは不全の個体/血流のない個体)、血管が形成されない変異体(血流/血管のない個体)、心機能に異常を引き起こす薬剤処理をした個体(心拍のない個体)や低酸素処理をした個体を作成し、循環器系に様々な異常を作りだし、それに伴い変動する遺伝子群を網羅的に解析しました。

 その結果、循環器系の異常の種類に応じて、多くの遺伝子が特徴的な発現変化をしていることがわかりました。

 感覚器官では、血流だけでなく、血管そのものからのシグナル(注3)が重要であることが分かりました(図1:局所での相互作用)。

 肝臓や脳を含む中枢神経系においては、コレステロール代謝に関わる遺伝子が血流の有無によらず血管からのシグナルによって抑制的に制御されていることが分かりました(図1:ステロールホメオスタシス(注4))。

 また、肝臓では、脂質の制御に関与する遺伝子が心筋や血管の消失により顕著に減少していることから、それらの遺伝子の発現が循環器系の働きに強く依存していることが考えられました(図1:脂質代謝)。さらに肝臓の遺伝子には、血管が無くても、心臓が拍動しているだけで発現が維持されるような遺伝子があり、心臓から肝臓へと伝わる未知のシグナルの存在が考えられました(図1:心臓から肝臓への破線矢印)。

 心機能が低下したときや血管や血流がなくなると低酸素状態になりますが、本研究で見出された遺伝子発現の変化は、低酸素処理をした個体ではほとんど見られませんでした。

 以上のことから、循環器系は、組織・臓器の形成過程において、血流や酸素の運搬以外にも、組織・臓器毎に特徴的な働きを通じて特定の遺伝子の発現制御に関与していることが明らかになりました。

 ※参考図などリリース詳細は添付の関連資料を参照

 

 

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

参考図などリリース詳細

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0463432_01.pdf

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