東大など、凝集化するタンパク質1分子の励起運動を観察することに成功
発表日:2017年11月1日
凝集化するタンパク質1分子の励起運動を初観察!
―アルツハイマー病などの新治療戦略へ期待―
4.発表のポイント
◆タンパク質数十個の分子が凝集する過程で、激しいブラウン運動(注1)を伴う分子凝集体(ネットワーク)の形成と崩壊が繰り返されていることを世界で初めて観察した。
◆凝集時のタンパク質1分子の動態を高精度に観察できる高速計測技術を確立し、無機・有機・タンパク質系において共通する局所励起運動を特定した。
◆アルツハイマー病などの発症と強く関わるとされる分子凝集プロセスの1分子観察が可能となり、分子凝集化を制御・抑制する全く新しい治療戦略の可能性に道をつけた。
5.発表概要:
生体内タンパク質分子の異常凝集として有名なアミロイドーシス(注2)は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経系疾患から、II 型糖尿病などの内分泌疾患、プリオン病など20 種類以上に及ぶ疾患との関係が議論されています。しかし、それぞれの疾患に対する有効な治療法は現在まで確立されていません。これら未解決の主原因として、生体内溶液中でのタンパク質分子の動的な振る舞いに関する情報の欠如が挙げられます。本研究では、タンパク質溶液の局所的な1分子動態観測とその計測技術の確立を目的とし、凝集化プロセスのモデルケースとして、過飽和溶液(注3)条件下での分子凝集に着目しました。
東京大学大学院新領域創成科学研究科(産業技術総合研究所-東京大学 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ兼務)の佐々木裕次教授、大阪大学、神戸大学及び(公財)高輝度光科学センターの研究グループは、X 線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking; DXT)(注4)を応用し、過飽和溶液中のタンパク質分子(リゾチーム)の凝集化プロセスにおいて、タンパク質分子内部及びその周辺が激しく運動していることを観測しました。この結果を詳細に解析したところ、この激しい運動は、フェムトニュートン(注5)という非常に微弱な力場(注6)を形成していることが分かりました。これは、激しいブラウン運動を伴う分子凝集体(ネットワーク)の形成と崩壊が繰り返されていることを示しています。
これらの研究成果により、アルツハイマー病などの発症プロセスと強く関わるタンパク質凝集プロセスを1分子観察できるようになったので、将来的に過飽和現象を利用した全く新しい治療戦略を展開する可能性が出てきました。
※リリース詳細は添付の関連資料を参照
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
リリース詳細
関連リンク