2019年5月26日(日)

プレスリリース

東北大と東工大、新しい有機半導体用電極を開発

2017/10/17 18:00
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発表日:2017年10月17日

従来の性能を越える新しい有機半導体用電極の開発

電極材料によらず電子・正孔両方の注入が可能に

【発表のポイント】

●有機半導体において、通常の金属電極を凌駕する世界最高性能の電荷注入効率の電極を設計して実証した。

●新しい電極は、電子と正孔を同等に有機半導体に注入することができる。

●新しい電極は、空気中で安定であり、種々の電子デバイスへの応用が期待できる。

●新しい電極は、高性能な電界発光素子への応用が可能である。

●新しい電極は、中間層のナノ構造を操作することにより簡単なプロセスで高性能電極となる。

【概要】

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)・同大学院理学研究科のタンガベル カナガセカラン助手、下谷秀和准教授および谷垣勝己教授は、東京工業大学物質理工学院の清水亮太特任講師(現 JSTさきがけ専任研究員)および一杉太郎教授と共同で、有機半導体デバイスに使用される電極において、これまで報告されている中で最も優れた性能を示す電極を開発する事に成功しました。新しい電極は有機半導体において代表的な金属電極である金(正孔注入に用いられる電極)およびカルシウム(電子注入に用いられる電極)よりも優れた電荷の注入効率を示しています。この新しい電極は、正孔(正の電荷)(注1)と電子(負の電荷)を同等の効率で導入することができるばかりでなく、カルシウム等とは異なり空気中で安定です。新しい電極は基礎科学の観点から重要であるばかりでなく、高性能な電界発光素子(注2)などの電極として期待されます。本研究成果は平成29年10月17日(火)18時(日本時間)に、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されます。

【詳細な説明】

現在、多くの半導体素子はシリコンなどの無機半導体を用いて作製されています。それに対して有機半導体は、柔軟性、軽量、プロセスの容易性など多くの優れた特性を示すことから、次世代の半導体材料として多くの期待が寄せられています。しかし、有機半導体の大きな問題点の一つは、電荷を運ぶ粒子(正孔および電子)の電極からの注入効率が悪いことでした。特に、正孔と比較して電子の注入効率は著しく劣っていました。本研究グループでは、図1のような金属/有機多結晶半導体/テトラテトラコンタン(鎖状炭化水素分子の一種)という三層構造の電極を新しく設計して、その性能が従来のいかなる電極よりも格段に優れていることを実証しました。

新しい電極では、テトラテトラコンタン薄膜の効果により結晶性の低い多結晶半導体薄膜が形成され、そのバンドギャップ(注3)内に生じる電子準位が重要な役割を果たします。まず、図2に示すように金属と多結晶半導体の接合界面に形成されるバンドギャップ内準位のために金属―半導体接合が従来のショットキー極限(注4)から離れてバーディーン極限(注5)へ近づくと同時に、多結晶半導体の構造の乱れに起因するバンドギャップ内準位を介して小さい活性化エネルギーで正孔と電子が半導体に注入されます。そのため、電極に用いる金属の種類によらず正孔、電子ともに低抵抗で注入されます。

有機半導体単結晶を用いた電界効果トランジスタにこの電極を応用したところ、図3に示した通り新電極は従来の金電極からの正孔注入およびカルシウム電極からの電子注入より大きな電流を流しました。さらに、従来の電極では電子と正孔の注入の向きを入れ替えるとトランジスタとして動作しないのに対し、新電極は入れ替える前と同等に動作しました。また、この結果を踏まえて空気中で不安定なカルシウム等を用いずに有機単結晶発光トランジスタの作製に成功しました(図4)。以上のことは空気中での安定性等、素子に求められる条件を満たす任意の金属を用いて高性能な電極を作製できることを示しており、有機半導体の基礎研究だけでなく応用においても様々な活用が期待されます。

※図は添付の関連資料を参照

※リリース詳細は添付の関連資料を参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

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リリース詳細

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